2015年08月02日
祭りの夜に・・・
オヤジが泣くんです。
「ウェーン、ウェーン」 って、声を上げて。
でも、涙は出ていません (あんたは、聖子ちゃんかっ!)。
「じいさん、お祭りに行くか?」
「お祭り? どこでやってんだい?」
「○○公園だよ」
昨日は、実家のある町内の納涼大会でした。
夕方4時から、大音響で音楽が流れてきます。
「ビールが飲めるよ」
「えっ、ビールが飲めるのか?」
「ああ、ほれ!」 と僕は、オヤジの目の前に、町内に配られた模擬店の引き換え券を差し出しました。
「行くよ。連れてっておくれ」
ところが、オヤジの格好を見ると……、まるで冬の服装です。
半袖のシャツの上に長袖のシャツをきて、短パンの上に長ズボンをはいています。
年寄りは、自分の体温管理ができないのです。
このクソ暑い中、電源を入れたこたつに入っている時だってあるのです。
「おい、じいさん! なんちゅう格好をしているんだい。熱中症で死ぬぞ! 暑くないんかい?」
「暑くない。ちょうどいい」
「ダメだ! その格好じゃ、お祭りには連れていかない」
「どうしたら、いい?」
「一度、全部脱いで! 靴下もだよ。Tシャツと短パンだけになりなよ」
そう告げて、僕は階下へ降りました。
10分、20分、いつまで経ってもオヤジは下へ降りて来ません。
行ってみると……
上はTシャツを着ていますが、下は右足に短パン、左足に長ズボンを突っ込んだまま立っています。
「何しているんだよ! もう、いいよ。お祭に行くのは、ヤメにしよう。ビールもなしだ!」
頭に血がのぼってしまった僕は、つい大声を上げてしまいました。
すると、泣くんです。
両手で顔をおおって、「ウェーン、ウエーン」 って。涙を出さずに。
「勘弁してくれよ。ウソ泣きしたってダメだよ」
そう言えば、
「だって、どっちをはいて行くんだか、分からなくなっちゃんたんだよ。お願いだから、もう一度、言ってくれないかなぁ~?」 だって (幼稚園児以下だな)。
でも、これで終わらないんです。
「さあ、行くよ」 と先に外へ出れば、やっぱり来ない。
行ってみると今度は、右足に僕の靴をはいて、左足を無理やり、オフクロの靴に突っ込もうとしているのです。
「なんだか、こっちの靴が小さいんだよ」
「勘弁してよ、もう! 裸足なんだから、サンダルに決まっているだろう!」
結局、出かけるまでに30分以上もかかってしまいました。
でもね、公園では、やぐらの下のベンチで、おいしそうに生ビールを飲んでいましたよ。
「先生、いいですね。親子でビールが飲めるなんて、幸せだ」
そう、近所の人たちが声をかけて行きます。
オヤジは、長年、この町で塾の教師をしていたのです。
だから、町の人はみんなオヤジのことを 「先生」 と呼ぶんですね。
「ええ、幸せです。長生きはするもんですよ」
まっ、いっか。
いつものことですけど、オヤジのうれしそうな顔を見ると、許してしまうんですね。
来年の夏も、こうして一緒に、ここでビールが飲めるといいんですけど……。
Posted by 小暮 淳 at 15:55│Comments(3)
│つれづれ
この記事へのコメント
暑い中、外で呑んだビールは美味しかったでしょうね〜。
来年も面白話、あっ失礼、介護の実況中継を楽しみにしてまーす。
来年も面白話、あっ失礼、介護の実況中継を楽しみにしてまーす。
Posted by 優・寛の母さん at 2015年08月02日 22:28
いつもながらの微笑ましいです。
暑さを忘れてホッとしてしまいます。
私は親孝行をしなかったので反省させられる内容です。
暑さを忘れてホッとしてしまいます。
私は親孝行をしなかったので反省させられる内容です。
Posted by 気まぐれ爺さん at 2015年08月03日 08:38
優・寛の母さんへ
もちろん、来年があればですけど……。
と、いうのも、オヤジの脳は加速を増して壊れています。
ブログには書けないような失態が多々あるんですよ。
だんだん家族だけでは、手に負えなくなっているのも現実です。
気まぐれ爺さんへ
いつも心温まるコメントをありがとうございます。
“親孝行” なんていう殊勝なことはしていません。
すべて “親不孝” をしたことへの罪ほろぼしなんです。
もちろん、来年があればですけど……。
と、いうのも、オヤジの脳は加速を増して壊れています。
ブログには書けないような失態が多々あるんですよ。
だんだん家族だけでは、手に負えなくなっているのも現実です。
気まぐれ爺さんへ
いつも心温まるコメントをありがとうございます。
“親孝行” なんていう殊勝なことはしていません。
すべて “親不孝” をしたことへの罪ほろぼしなんです。
Posted by 小暮 淳
at 2015年08月03日 20:59
