2018年07月30日
介護日和
「この部屋は小さくて、いいですね。私とあなた、ふたりきり。いいですね」
認知症の老人は、突然、脈絡もなく、意味不明なことを言うものなのです。
今年94歳になるオヤジは、認知症の症状が出始めてから、かれこれ10年近くになります。
その症状は、年々重くなる一方で、今では、まったく自分以外の人間は、どこの誰だか分かりません。
(なぜか、自分のことは名前も生年月日も分かります)
平日は、デイやショートステイのサービスを利用しながら、実家にてアニキが面倒を看ています。
週末は、できるだけアニキの負担を軽減するためと、アニキを東京の家族の元へ帰すために、我が家にオヤジを引き取って面倒を看ています。
(オフクロは重度の老衰のため、現在はリハビリ施設に預けています)
問題は、この猛暑です。
昨年までは、難なくこなしていましたが、今年は暑過ぎて、オヤジの熱中症が心配で、介護を苦労しています。
というのも、オヤジを預かっている我が家の和室(6畳) には、エアコンがありません。
例年ならば、日中の暑いうちは僕の仕事部屋に居てもらい、寝るときになると和室へ移動していました。
が、今年のこの暑さです。
夜中でも30℃を下らない熱帯夜であります。
ということで、先週までは僕が実家へ行き、オヤジの部屋に泊まっていました。
でもね、それでは、やっぱりダメなんです。
いくら僕がオヤジの面倒を看ているといっても、アニキにとっては休養にならないのですよ。
東京に帰っているときは、それで良いのですが、こちらに居るときは、気が休まらないようです。
「やっぱり、オヤジを連れてってくれよ」
と言われれば、弟としては従うしかありません。
で、この週末を迎えました。
<最悪、オヤジを俺のベッドに寝かせて、一緒に添い寝をするか……>
と腹をくくっていたのですが、幸か不幸か、台風が日本を直撃しました。
台風の進路に当たって被害が出た地域の方々には、大変申し訳ないのですが、関東地方は接近しただけだったため、適度なお湿り雨となり、気温もグッと下がり、久しぶりに涼しい数日間となりました。
よって、この週末はエアコンいらずで、扇風機の風だけで快適に過ごせました。
そんな台風が去った日曜日の夕暮れ、セミが一斉に鳴き出した時でした。
オヤジが、突然、冒頭のセリフを言ったのです。
目も見えない、耳も聞こえない、耄碌爺さんだとばかり思っていたので、ビックリしました。
“ふたりきり”
って、誰と誰のことを言っているのでしょうか?
オヤジと僕の今年の夏は、まだ始まったばかりです。
Posted by 小暮 淳 at 18:20│Comments(0)
│つれづれ