2017年02月05日
縁は万里を超えて
無頼派を気取っている僕にとって、このテの形式ばった儀式は、大の苦手なのであります。
でも今回だけは、仕方がありません。
出席する側ではなく、迎える側なのですから……。
腹をくくって、臨みました。
昨日は、長男の結婚式ならびに披露宴でした。
僕は、新郎の父という大役を務めてまいりました。
「緊張しますね」
控え室で、ペンギンのような格好をした新婦の父が言いました。
「ガラではありません。逃げて帰りたいくらいですよ」
同じ格好をした僕が言うと、ハハハと笑い合ったのであります。
式は、滞りなく終わり、いよいよ披露宴の始まりです。
初めて座る末席からの眺め……。
なんとも不思議な気持ちになります。
正面、高砂の席には、新郎という名の我が息子の姿があり、隣にはウェディングドレス姿の可愛らしい花嫁が座っています。
主賓のスピーチ、友人たちの余興など、聞き逃すまいと真剣になって身構えてしまいます。
スクリーンに映る息子との生い立ち映像……。
生まれたばかりの息子を抱えて湯舟に入る、若き自分の姿には、思わず笑ってしまいました。
「R(息子の名) の父です。この度は、ありがとうございます」
「Rの母です。息子がいつもお世話になっております」
瓶ビールを片手に、新郎側のテーブルをまわる僕と家内。
「息子さんは優秀ですよ。将来は我が社を背負って立つ人材です」
上司の言葉に苦笑い。
「Rは、本当に素直でイイヤツですよ」
友人の言葉に、ほっこり。
なかには 「私、温泉が大好きで、お父さんのファンなんです。一緒に写真を撮っていただけますか?」 なーんていう女子の同僚もいたりして、この時だけは息子から主役の場を奪ってしまいました。
そして披露宴は、クライマックスへ。
新婦から両親への、お手紙朗読の時間です。
隣を見れば、まだ読み出す前から家内は泣いています。
「新婦のお母さんが、まだ泣いていないのに……」
なんて思いながら、僕も必死になって涙をこらえていたのであります。
だって、この後に大役が控えているのですからね。
「それでは、両家を代表いたしまして、新郎の父、小暮淳様よりお礼の言葉をお願いいたします」
スーッと、僕の前にマイクスタンドが現れました。
いつもの調子で、いつもの調子で、と自分に言い聞かせていましたが、やっぱり講演やセミナーとは勝手が違います。
フリートークなら自信があるのですが、今日は立場が違います。
あくまでも、新郎の父なのであります。
「えー、小暮家・○○家を代表しまして、ひと言ご挨拶を申し上げます。皆様、本日はご多様中の折り、また遠方より、新郎新婦のためにご臨席をいただきまして、誠にありがとうございます。また、ご来賓の皆様方から心温まるお言葉を多数いただきまして、心よりお礼申し上げます」
えーーーーい! ダメだダメだダメだダメだーーーー!!!!
全然、僕らしくないって!
て、いうか、この調子で話していたら、いつか舌を噛んでしまいそうです。
えーーい! ヤメたヤメたヤメたーー!!!
ということで、この後からは得意なフリートークに変更。
気が付いたら5分以上もしゃべっていました。
最後、息子からは 「父の話が長かったので、短めに話します」 と新郎のあいさつで釘を刺されてしまいました。
でも、僕が言いたかったことは、人生のほとんどは “縁” でできているということ。
いくら“円” を持っていても縁だけは、買えませんものね。
ふたりが出会ったのも縁、両家が出会ったの縁、親類縁者、会社の上司や同僚、友人たち、そして我が子として生まれてきたことも、すべてが縁なのであります。
僕は、ただただ、そのことを、若いふたりに伝えたかったのであります。
“縁は万里の長城を越えてやって来る”
中国の古いことわざです。
縁のない人は、袖(そで)が触れ合っても行き違う。
でも縁ある人は、万里の長城を越えてやって来る。
R、Mちゃん、末永くお幸せに。
この縁を、いつまでも大切に。
Posted by 小暮 淳 at 16:04│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
先生、このたびはご子息様のご結婚、誠におめでとうございます。
立派に子息様を育てて来られた先生、奥様にも心よりお祝いを申し上げます。
土曜日はなんだか、私もそわそわ落ち着かない気分でした(笑)
やはり、ご息子から主役の場を奪ってしまう場面もあったのですね(^-^)
そして・・・
・・・人生のほとんどは “縁”・・・
この言葉に先生がどんな思いを込められたか・・・
先生の愛情の深さに今更ながら感動してしまいます。
若いお二人が、これからたくさんの素晴らしいご縁に恵まれますように。
幸せに満ちた素敵な門出に乾杯です。
立派に子息様を育てて来られた先生、奥様にも心よりお祝いを申し上げます。
土曜日はなんだか、私もそわそわ落ち着かない気分でした(笑)
やはり、ご息子から主役の場を奪ってしまう場面もあったのですね(^-^)
そして・・・
・・・人生のほとんどは “縁”・・・
この言葉に先生がどんな思いを込められたか・・・
先生の愛情の深さに今更ながら感動してしまいます。
若いお二人が、これからたくさんの素晴らしいご縁に恵まれますように。
幸せに満ちた素敵な門出に乾杯です。
Posted by mimi at 2017年02月05日 20:36
mimiさんへ
ありがとうございます。
無事、大役を務めることができました。
できれば、こんなことは今回1回だけにしたてほしいものです。
でも、終わってみれば、長く意味のある1日だったと思います。
何よりも、自分の息子の “素顔” を見れたような気がします。
同時に “親” なんて、子どものことを何も知らずに生きているのだと、思い知らされました。
良いも悪いも、心に刻み込まれた日でした。
ありがとうございます。
無事、大役を務めることができました。
できれば、こんなことは今回1回だけにしたてほしいものです。
でも、終わってみれば、長く意味のある1日だったと思います。
何よりも、自分の息子の “素顔” を見れたような気がします。
同時に “親” なんて、子どものことを何も知らずに生きているのだと、思い知らされました。
良いも悪いも、心に刻み込まれた日でした。
Posted by 小暮 淳 at 2017年02月07日 00:08