2020年01月09日
源泉ひとりじめ(3) 絹のような湯の玉が、コロコロと肌を転がり落ちた。
癒しの一軒宿(3) 源泉ひとりじめ
猪ノ田温泉 「久惠屋旅館」 藤岡市
春に御座れよ 猪田のお湯に
山のつつじも 咲いて待つ
夏に御座れよ 猪田のお湯に
澤の河鹿(かじか)も 鳴いて待つ
秋に御座れよ 猪田のお湯に
谷の紅葉(もみじ)も 染めて待つ
冬に御座れよ 猪田のお湯に
雪の中にも 沸いて待つ
「猪田鑛泉民謡」より
藤岡市内といっても、下日野は山の中だ。
県道からわずか1,900m入り込んだだけで、携帯電話の電波も届かない深山幽谷に抱かれた一軒宿。
猪ノ田(いのだ)川のせせらぎと、庭園をあしらった純和風の建物が、旅人を出迎えてくれた。
「お風呂、お願いします」
幼い男の子と女の子を連れた母親が、フロントに声をかけていた。
聞けば、週に何度が、子供のアトピー性皮膚炎の治療に通って来るのだという。
明治初期から四季を通じて湯治客が訪れるようになり、明治19年の記録には旅人宿の記録も残っている。
『猪田鑛泉ハ古来ヨリ猪田川ノ川邉ニ湧出シ薬師ノ湯ト称ス』と記され、主に皮膚病に効くと言われ続けてきた。
今でも県内はもとより、遠く関西方面からも医者に見放された患者が湯治に訪れている。
浴場の扉を開けると、ツーンと硫黄臭が鼻孔を突いた。
無色透明の湯に体を沈め、総檜の天井を眺めているうちに、やっと旅装を解いた気分になった。
ここの湯は、別名 「絹の湯」 とも呼ばれている。
湯舟から腕を出すと、湯の玉がパァーッと弾かれて肌の上を滑り落ちてゆく。
まるでワックスをかけた車のボンネットに降った雨を見ているようだ。
コロコロと転がる様が面白くて、何度も何度も腕を湯から出し入れしてみた。
●源泉名:絹の湯
●湧出量:非公開(自然湧出)
●泉温:12.8℃
●泉質:硫化水素を含有するアルカリ性冷鉱泉
<2004年6月>
Posted by 小暮 淳 at 11:48│Comments(2)
│源泉ひとりじめ
この記事へのコメント
凄い、こちらに行きたいと考えていたら
ブログに、、、
師匠様の出版記念パーティーに参加させていただいたときに、女将さんとお話しをしていて、お肌がきれいな方でいつかお邪魔したいなと思い続けてまだ行けずです。
ブログに、、、
師匠様の出版記念パーティーに参加させていただいたときに、女将さんとお話しをしていて、お肌がきれいな方でいつかお邪魔したいなと思い続けてまだ行けずです。
Posted by ぴー at 2020年01月09日 12:39
ぴーさんへ
その節は、大変お世話になりました。
もう10年も前のことなんですね。
確かに久惠屋旅館の若女将が来ていましたね。
色白の美しい人です。
ぜひ、ぴーさんも“絹美人”になりに行ってください。
その節は、大変お世話になりました。
もう10年も前のことなんですね。
確かに久惠屋旅館の若女将が来ていましたね。
色白の美しい人です。
ぜひ、ぴーさんも“絹美人”になりに行ってください。
Posted by 小暮 淳 at 2020年01月10日 13:09