2020年04月01日
源泉ひとりじめ(25) 女将の笑顔に、「また来ます」 と応えてた。
癒しの一軒宿(25) 源泉ひとりじめ
倉渕温泉 「長寿の湯」 高崎市
「女将さんに、つかまるなよだって! 私はさ、話好きだからね」
そう言って、声高に笑ってみせた。
いい宿の条件は、人それぞれだと思う。
温泉があり、情緒があれば、まずは文句はない。
でも、やっぱり人情が旅のスパイスだ。
宿に着くなり、女将の人柄に魅了されてしまった。
平成の大合併は、秘湯ファンの旅心をくじいてしまったような気がする。
だって、ここが高崎市(旧・倉渕村) だなんて……。
榛名山の豊かな伏流水が湧く温泉は、地元では約300年前から 「たまご湯」 と呼ばれている名湯である。
国道406号 「権田」 の信号から中之条町方面へ、榛名山の西麓を巻いて走ると右手に山小屋風の建物が見える。
日帰り入浴施設のイメージが強いが、れっきとした温泉旅館だ。
女将の故郷・山梨では、このスタイルの宿が多いのだそうだ。
手前の大広間は、日帰り客の休憩所も兼ねている。
その先、格子の扉の向こうからが宿泊棟だ。
廊下には、色鮮やかな浴衣が陳列されている。
女性客だけのサービスだという。
これも女将のアイデアのようだ。
何はともあれ、自慢の源泉風呂へ。
2本のパイプで汲み上げる湯量は、毎分310リットルという豊富さ。
内風呂は、やや黄色がかった塩化物温泉、露天は無色透明の単純温泉。
2つの源泉を思う存分に楽しめる。
どちらもザーザーと惜しげもなく、かけ流されている。
真夜中、もう一度、露天風呂に入った。
昼間、女将から聞いた話を思い出したからだ。
「夏はホタルが舞い、今の季節は宿の真上を天の川が流れているの」
仰ぎ見れば、満天の星、星、星……
星が多過ぎて、どこが天の川なのか分からない。
それでも 「天の川を見た」 と自慢したくなった。
●源泉名:長寿の湯
●湧出量:310ℓ/分 (動力揚湯)
●泉温:31℃
●泉質:ナトリウム-塩化物温泉、単純温泉
<2006年4月>
Posted by 小暮 淳 at 10:21│Comments(0)
│源泉ひとりじめ