2015年11月02日
想い出の扉 ~ 40年間の空白 ~
全国1億2千万人の “いもうと” ファンのみなさん、大変お待たせいたしました~!!! (かなり大げさですが)
あれから半年、その後の2人の関係を知りたがっている読者もたくさんいるかと思います。
今年の4月23日に、『い も う と』 というタイトルでブログを書いたところ、その後、たくさんの読者から反響をいただきました。
また、ブログを読んだ友人、知人らからも 「感動した」 「小説にしてほしい」 「映画化しよう」 などのメールをもらいました。ありがとうございました。
でも一番多かったのは、「その後、どうなったか?」 であります。
きっと読者のみなさんも、そこが気になるところではないでしょうか?
その後、僕らは会っています。
といっても、“逢っている” のではなく、ただ会っているだけです。
2人の関係は、半年前とまったく変わっていません。
コンビニの店員と客です。
それも朝の忙しい時間帯なので、たとえ会えても、互いに会釈をする程度。
「おはよう」 「おはようございます」 と声をかけ合うのが精一杯です。
ところが昨日は違いました。
当然、彼女はいないものと思いながら、いつもとは違う時間帯に立ち寄りました。
店内には、僕のほかに客の姿はありません。
商品を手に、レジへ。
そしたら彼女が、いたんです。
「あれ、この時間もいるの?」
「ええ、日によっては……」
カウンターをはさんだ至近距離で、面と向かって話すと、なんだか照れるものです。
でも、次の客が来るまでのわずかな時間でしたが、少しだけ話をすることができました。
現在、年老いた両親の介護をしながら、独身の息子さんと4人暮らしであること。
ご主人とは20年前に離婚していることなど、矢継ぎ早に話してくれました。
そして彼女は、現在の僕の仕事のことも知っていました。
「何年か前だけど、おにいちゃんのことが、回覧板で回ってきたから」
確かに僕は2年前、彼女が暮らす町の施設で、講演会をやったことがありました。
あれから40年…。
50代半ばを過ぎた彼女の顔には、女手一つで子どもを育てた苦労の跡が、深い溝となって幾本も刻まれています。
お釣りを差し出した手の甲にも、年輪を感じました。
僕だって、他人のことは言えません。
白髪は増えたし、老眼は進んでいます。
ふと、彼女の胸の名札に目が留まりました。
僕の知っている旧姓ではありませんでした。
たぶん、子どものためにご主人と別れた後も、苗字を戻さなかったんですね。
時間にして、わずか数分の立ち話でした。
それでも僕たちは、空白の40年間を埋めようと互いのことを話しました。
「ありがとうございます。またお越しくださいませ」
次の客がレジに並ぶのと入れ替えに、僕はそっと想い出の扉を閉めました。
Posted by 小暮 淳 at 18:33│Comments(0)
│つれづれ