2018年07月10日
あわてん坊な読者
以前、「キレる中高年」(2018年2月14日) というブログを書いたところ、多くの反響をいただきました。
なぜ中高年はキレやすいのか?
定年退職した喪失感からの苛立ちとか、諸説あるようですが、一説には、認知症の始まりとの指摘もあります。
心当たりのある方は、ご注意くだされ!
ブログでは、中高年が、やたらと店員に “怒鳴る” “せかす” といった理不尽なクレームをつけるという行動について書きましたが、僕ら編集・出版業界にもクレームは付きものです。
ま、たいがいは出版や編集の担当者が処理してくださるのですが、時として、僕のように記名で記事を書いている場合は、筆者まで持ち込まれることがあります。
その場合、確かに内容の誤りだったり、表記の間違いだった場合は、素直に認め、後日、訂正と詫びの一文を掲載いたします。
でも、時として、熱心な上に、あわてん坊も読者もいたりするのです。
先日、某新聞に連載している記事に対して、読者から編集室に、こんな指摘がありました。
<「明朗活発」 は、「明朗闊達」 の間違いではないでしょうか?>
というものです。
僕は、「明朗活発」 という四字熟語を使いました。
確かに、読者の言うように “明朗” と聞くと、“闊達” と連想する人が多いと思いますが、“明朗” には、たくさんの四字熟語があります。
「明朗快活」、「明朗会計」 なども、よく使う言葉です。
ちょっと辞書を引けば、分かることなのですが、手間をはぶいて、つい電話やメールをしてしまうのですね。
以前、僕の著書に対しても、出版元に抗議の手紙が届いたことがありました。
若山牧水の 『みなかみ紀行』 に触れた一文に対してでした。
<大正11年10月21日。前夜は四万温泉に宿泊した歌人の若山牧水(37歳)は朝、宿を出て中之条から電車に乗って午後、渋川に着いた。ふたたび電車に乗り沼田で下車し、その晩は「鳴滝」という旅館に泊まっている。>
これに対して、読者は、
<若山牧水は電車に乗りません。電車は当時、ありませんでした。>
とのことでした。
最初は、なんのことを言っているのか分かりませんでした。
だって、牧水自身が紀行文の中で、そう書いているのですから……
よくよく手紙を見ると、みなかみ町在住の読者でした。
しかも大正生まれのご高齢の方です。
さっするに、昭和3年に開通した上越線と勘違いしているのではないでしょうか?
渋川~沼田間には、明治44年から利根軌道という馬車鉄道が開業しており、大正7年には全線が電化されています。
ですから、もちろん牧水は電車に乗れたわけです。
読者には、その旨を告げる手紙を書きました。
ちょっと調べれば分かることですが、人は、ついつい自分の感情に支配され、思いつきで行動してしまうもののようです。
でも、そんな “あわてん坊” の読者さんたちですが、それだけ熱心に僕の記事を読んでくださっているということです。
やっぱり、筆者にとってはありがたい存在なのであります。
これからも、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。
Posted by 小暮 淳 at 11:43│Comments(0)
│執筆余談