2011年03月22日
豊かさの違い
「お客さんが変わった」
老舗と言われる、昭和以前から商いをつづけている古い旅館に話を聞くと、必ず返って来る言葉です。
昔の客は “泊めていただく”、今の客は “泊まってやる” なのだそうです。
「温泉が、有り難かった時代の話です」と話す主人もいました。
その背景には、戦後の高度経済成長が大きく関係しています。
温泉地が、湯治場から観光地へと目的を変えたからです。
「長期滞在型」から「1泊2日型」へスタイルも変えました。
前者は、もちろん湯治が目的であり、自炊または半自炊をしながら質素な食事を採り、療養をつづけるために温泉地へやって来ました。よって、湯と床を提供してくれる宿に対しては「泊めていただく」という感謝の気持ちが存在したのです。
後者の目的は、完全に観光およびストレスの発散場所です。上げ膳据え膳の豪華な料理と、殿様扱いされる優越感を求めてやって来るようになりました。だから「泊まってやる」という横柄な態度になってしまったのです。
“お湯が神様” から “お客が神様” へと、優先順位の転倒が起きたといえます。
僕は取材をつづけながら、この端境期(はざかいき)を探していました。
必ず主人たちに「いつ頃から極端に変わりましたか?」と尋ね、その統計を取っています。
その結果、顕著に表れたのは約20~30年前くらい。
ちょうど昭和から平成へ世の中が移り変わるあたりです。
世の中はバブルの真っ只中です。
豊かさの価値が、温泉の価値をも変えたようです。
そして……
平成元年には、温泉地にとって衝撃的な出来事が全国を襲いました。
竹下内閣による「ふるさと創生資金」のばらまきです。
全国の自治体が、一億円の使い道に、こぞって温泉の掘削を始めました。
これにより、日本全国の街中に温泉が湧き出しのです。
「日帰り温泉の出現が、一番大きいかもね」と、老舗旅館の主人たちは口を揃えます。
湯治場を支えていたお年寄りたちが、近場の温泉施設へ足を運ぶようになったのですから。
車を持たないお年寄りたちにとって、徒歩やバスで行ける日帰り温泉施設が、現代の“湯治場”となったようです。
でも、時間とお金のあるお年寄りたちこそ、温泉地へ戻って来て欲しいお客様なのです。
「質素な料理でも長期滞在しながら湯を浴んでいた時代と、1泊で豪華な料理をお腹いっぱい食べて帰る現代と、どっちが豊かなんでしょうねぇ?」
そう言った女将さんがいました。
豊かさの違い……
時代は繰り返されるとも言います。
今回の震災を機に、日本人の豊かさの価値も、一変するかもしれませんね。
老舗と言われる、昭和以前から商いをつづけている古い旅館に話を聞くと、必ず返って来る言葉です。
昔の客は “泊めていただく”、今の客は “泊まってやる” なのだそうです。
「温泉が、有り難かった時代の話です」と話す主人もいました。
その背景には、戦後の高度経済成長が大きく関係しています。
温泉地が、湯治場から観光地へと目的を変えたからです。
「長期滞在型」から「1泊2日型」へスタイルも変えました。
前者は、もちろん湯治が目的であり、自炊または半自炊をしながら質素な食事を採り、療養をつづけるために温泉地へやって来ました。よって、湯と床を提供してくれる宿に対しては「泊めていただく」という感謝の気持ちが存在したのです。
後者の目的は、完全に観光およびストレスの発散場所です。上げ膳据え膳の豪華な料理と、殿様扱いされる優越感を求めてやって来るようになりました。だから「泊まってやる」という横柄な態度になってしまったのです。
“お湯が神様” から “お客が神様” へと、優先順位の転倒が起きたといえます。
僕は取材をつづけながら、この端境期(はざかいき)を探していました。
必ず主人たちに「いつ頃から極端に変わりましたか?」と尋ね、その統計を取っています。
その結果、顕著に表れたのは約20~30年前くらい。
ちょうど昭和から平成へ世の中が移り変わるあたりです。
世の中はバブルの真っ只中です。
豊かさの価値が、温泉の価値をも変えたようです。
そして……
平成元年には、温泉地にとって衝撃的な出来事が全国を襲いました。
竹下内閣による「ふるさと創生資金」のばらまきです。
全国の自治体が、一億円の使い道に、こぞって温泉の掘削を始めました。
これにより、日本全国の街中に温泉が湧き出しのです。
「日帰り温泉の出現が、一番大きいかもね」と、老舗旅館の主人たちは口を揃えます。
湯治場を支えていたお年寄りたちが、近場の温泉施設へ足を運ぶようになったのですから。
車を持たないお年寄りたちにとって、徒歩やバスで行ける日帰り温泉施設が、現代の“湯治場”となったようです。
でも、時間とお金のあるお年寄りたちこそ、温泉地へ戻って来て欲しいお客様なのです。
「質素な料理でも長期滞在しながら湯を浴んでいた時代と、1泊で豪華な料理をお腹いっぱい食べて帰る現代と、どっちが豊かなんでしょうねぇ?」
そう言った女将さんがいました。
豊かさの違い……
時代は繰り返されるとも言います。
今回の震災を機に、日本人の豊かさの価値も、一変するかもしれませんね。
Posted by 小暮 淳 at 11:37│Comments(4)
│温泉雑話
この記事へのコメント
廃材で(道の側溝を釜にドラム缶に水を張り廃材を燃やす)お湯を沸かして湯たんぽにしている!
というレポートがテレビでありました。
お湯があるかないかで、被災地の豊かさが、違うんです。
バッテリーが無く失礼します
というレポートがテレビでありました。
お湯があるかないかで、被災地の豊かさが、違うんです。
バッテリーが無く失礼します
Posted by ぴー at 2011年03月22日 15:28
(・。・) ですよね。
根拠の無い持論ですが アメリカの影響なのでしょう?
一神教 一元論 答えは一つ 自然は征服し自分の富とする
今回の自然 災害で 日本人の無常感が発達した訳が 良く分かりました。
今年の 桜は 犠牲者を想い合掌したい気分になるはず。(/_;)
エントロピーの法則に従い エネルギーは無くなり経済活動も停止
これは 前触れなのかも?
今から 学び備えておかなとイケません
先人たちの知恵 温泉のその一つだと思います。
(@_@;) 今日は ガソリン難民してました。
根拠の無い持論ですが アメリカの影響なのでしょう?
一神教 一元論 答えは一つ 自然は征服し自分の富とする
今回の自然 災害で 日本人の無常感が発達した訳が 良く分かりました。
今年の 桜は 犠牲者を想い合掌したい気分になるはず。(/_;)
エントロピーの法則に従い エネルギーは無くなり経済活動も停止
これは 前触れなのかも?
今から 学び備えておかなとイケません
先人たちの知恵 温泉のその一つだと思います。
(@_@;) 今日は ガソリン難民してました。
Posted by momotaka at 2011年03月22日 15:47
ぴーさんへ
日本人はDNAの中に“湯”への憧憬が組み込まれているのですね。
最後は、温泉の癒やし力が被災地を救ってくれると信じています。
momotakaさんへ
ガソリン買えましたか?
僕は地震発生日以降、まだ一度も車に乗っていません。
日本人はDNAの中に“湯”への憧憬が組み込まれているのですね。
最後は、温泉の癒やし力が被災地を救ってくれると信じています。
momotakaさんへ
ガソリン買えましたか?
僕は地震発生日以降、まだ一度も車に乗っていません。
Posted by 小暮 淳 at 2011年03月23日 15:13
はい。 買えました。
2000円分ですけど 軽自動車で良かった^^v
ガソリンは入荷しても 即完売みたいですね。
デリバリが 追いつかない様子。
行列を見ると 本当に解消するか? 疑問です。
2000円分ですけど 軽自動車で良かった^^v
ガソリンは入荷しても 即完売みたいですね。
デリバリが 追いつかない様子。
行列を見ると 本当に解消するか? 疑問です。
Posted by momotaka at 2011年03月23日 18:19