2019年07月05日
しおりちゃんは元気ですか?
「しおりちゃんは、元気ですか?」
僕の前で、上品に微笑みながら立つ、高齢の婦人。
初対面なのに、「はじめまして」 でも 「こんにちは」 でもありませんでした。
僕の顔を見た第一声は、
「しおりちゃんは、元気ですか?」
だったのです。
読者の方は、覚えているでしょうか?
今から7年前のことです。
偶然、薬局の待合室に置かれていた僕が書いた絵本 『誕生日の夜』 を読んだ女性が、その薬局を通じて僕に手紙をくださった話です。
※(当ブログの2012年3月8日 「『誕生日の夜』が小学校で…」 参照)
I さんは、元小学校の教師です。
当時は、学童保育で絵本の読み聞かせをしていました。
いただいた手紙は、こんな書き出しで始まっていました。
<心音にしみとおる、こんな素晴らしい本をお書きになる小暮様は、どんな方なのでしょうか?>
そして、
<最初は1年生だけに読み聞かせていたのですが、反響が良かったので、他の学年の児童にも読んであげています。>
と……。
僕も、さっそくお礼の手紙を書きました。
すると、その後も薬局を通じて、I さんからコメントが届くようになりました。
<学童で育った子どもたちが、卒業後に “心に残った絵本” として 『誕生日の夜』 を挙げています>
との連絡をいただいた時は、正直、感動で涙が流れました。
「この話を世に出して、本当に良かった!」 と。
あれから7年……
先週、薬局へ行った時のことです。
「小暮さん、あの方ですよ! あの方が、I さんです」
薬剤師の方に言われて、振り向くと、婦人が立っていました。
僕も驚きましたが、呼ばれた彼女も大変驚かれてました。
「小暮です。やっと、お会いできましたね」
僕から、声をかけました。
そしたら、返ってきた言葉が、
「しおりちゃんは、元気ですか?」
だったのです。
しおりちゃんとは、絵本の中に登場する4歳の女の子です。
「はい、とっても元気ですよ。おとうさんも、おかあさんも……」
僕は、そう言葉を返しました。
縁ある人とは、いつか必ず会えるのですね。
※『誕生日の夜』 は、カテゴリーの中から全文を読むことができます。
Posted by 小暮 淳 at 18:05│Comments(0)
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