2023年02月10日
読み継がれる絵本
「『誕生日の夜』 を読ませていただきたいのですが?」
さるボランティア団体の方から連絡をいただきました。
以前、僕が取材で訪れたことのある団体で、視覚障害者のために本の朗読を録音したテープを届ける活動をしています。
『誕生日の夜』 とは、平成14(2002)年に自費出版した絵本です。
僕の子育て経験をもとに、誕生日を迎えた幼い少女と、その父親の一日を描いた話です。
挿画は友人の画家、須賀りすさんが担当しています。
(非売品で現在は絶版になっています)
20年以上も前に作った絵本なのにね。
不思議な思いで、快諾しました。
やはり10年くらい前だったと思います。
小学校で読み聞かせをしている方から突然、手紙をいただいたことがありました。
「『誕生日の夜』 を子どもたちに読み聞かせしています」 と……
手紙には長々と、子どもたちが涙を流しながら聞いていたことや、その後も子どもたちが感想を寄せてくれたことが書かれていました。
そして文末には、こんな言葉が添えられていました。
「しおりちゃん、おとうさん、おかあさんに、よろしくお伝えください」
しおりちゃんとは、絵本に登場する女の子の名前です。
その方は、子どもたちの声を作者に直接伝えたかったようです。
手紙を読んで、ただただ胸が熱くなるばかりでした。
(当ブログの2012年3月8日 「『誕生日の夜』が小学校で・・・」 参照)
また今回、どこかで誰かが、僕が作った話を聞いてくださっているのですね。
やっぱり、不思議でなりません。
あれから21年……
絵本のモデルとなった長女は、すでに結婚して、今年中学生になる男の子の母親です。
なのに絵本の中では、いまだに保育園に通う幼子のままなのです。
読み継がれるたび、僕は若き日の父親にもどります。
絵本は、いつでも、あの日あの時に連れて行ってくれます。
語り部のみなさん、ありがとうございます。
作者として、こんな幸せなことはありません。
※『誕生日の夜』 は、「カテゴリー」 より全文がお読みいただけます。
Posted by 小暮 淳 at 18:29│Comments(0)
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