2024年08月23日
毒団子は嫁に食わすな
民話や伝説をテーマにした講演で、よく僕は、言い伝えや迷信の話をします。
子どもの頃に、オフクロや祖母から言われた、意味の分からない言葉です。
たとえば、「夜中に爪を切ると親の死に目に会えない」 「霊柩車を見たら親指を隠せ」 「夜、口笛を吹くとヘビが来る」 などなど。
昔の人は、いったい何を伝えようとしていたのか?
民話や伝説同様、とっても興味があります。
こんな話もします。
「秋茄子は嫁に食わすな」
現代では、秋口のナスはおいしいから、息子を奪った憎き嫁になんかに食べさせたくはないという意地悪な姑の気持ちという説と、反対に、秋のナスは体を冷やすからと嫁の身を思う、やさしい姑の気持ちとする2通りに解釈されています。
でも科学的な根拠はなく、実際のところは意味不明のようです。
が!
僕は調べました。
これも一説にしか過ぎないのですが、かなり信憑性の高い出典にたどり着きました。
それは、鎌倉時代の和歌集 『夫木和歌抄』 に収録されている、こんな歌です。
≪秋なすび 若酒 (わささ) の粕につきまぜて 夜目 (よめ) にはくれじ 棚におくとも≫
語訳すれば、「酒粕に漬けた秋ナスをおいしくなるまで棚に置いておくのはよいが、ネズミに食べられないように注意をしましょう」 という意味のことが詠まれています。
そうなんです!
夜目 (よめ) とは、ネズミのことだったんですね。
たぶん、後世の人が面白がって、夜目と嫁をかけて、ダジャレで作った言葉が、いつしか意味を変えて、ことわざのように現代にまで伝わったのではないでしょうか。
先日の講演でも、この話に触れました。
すると講演終了後に、一人の若い女性が僕に話しかけてきました。
「今日の先生の話を聞いて、納得しました」
と言うのです。
何のことかと訊けば、“よめ” にまつわる話でした。
昔、彼女が聞いた話とは……
ある男が、知り合いから団子(だんご)をもらいました。
「これをヨメに食わせな」
と言って、手渡されたといいます。
その男は家に帰り、言われたとおり、嫁に団子を食べさせました。
すると嫁は、もがき苦しみ、死んでしまいました。
「この話って、夜目と嫁を勘違いした話だったんですね。やっと意味が分かりました。ありがとうございました」
と礼を言って、若い女性は僕の著書を購入して帰りました。
嫁が食べた団子は、ネズミ駆除用の毒団子だったのです。
Posted by 小暮 淳 at 11:54│Comments(0)
│講演・セミナー