2016年03月29日
磯部温泉 「桜や作右衛門」
<芹生(お) うる 沢のながれの細まりて かすかに落つる 音のよろしさ>
駐車場に車を停めて、日本庭園を眺める敷地内に入ると、すぐ右手に歌碑が建っています。
歌人の若山牧水は、大正6年6月に妙義山登山のために訪れ、大正8年4月にも磯部温泉に滞在しています。
2度目の来遊の際、ここ旧林屋に12日間滞在し、多くの歌を詠み、歌集 『磯部鉱泉にて』 を残しました。
旧林屋は明治8年(1875) に、林亭という屋号で料亭兼旅館として創業。
のちに対岳楼林屋と改名。大正、昭和には林屋、はやし屋と屋号を変えながら140年間の歴史を刻んできた磯部屈指の老舗旅館です。
2年前の平成26年3月、現在の館主に経営が移行され、「桜や作右衛門」 として生まれ変わりました。
僕が、ここを訪ねるのは2度目であります。
昨年の夏、磯部温泉の取材の途中で立ち寄り、日帰り入浴だけしました。
やっぱり記事にするには、ちゃんと泊まって、あこがれの歌人よろしく湯を浴み、酒を浴びなければ、いい文章は書けません。
ということで、昨日は夕刻から入り、カメラマン氏と撮影取材を行ってきました。
<霰(あられ) なす 樫の古葉にうちまじり 散りいそぐかも 庭のさくらは>
野天岩風呂は、その名も「樫の湯」。
そして、日替わりで男女が入れ替わる、もう1つの露天風呂が 「湯ざくら」。
どちらも、牧水の歌にちなんで名づけられています。
桜の花は、やっとつぼみが赤くほころび出したところです。
「1週間、早かったな」
「いや、この暖かさです。今週末には咲くでしょう」
湯の中で、そんな言葉を交わしつつ、頭の中は “花より団子” ならぬ湯上がりの生ビールのことでいっぱいだったのであります。
昨晩は、碓氷川のせせらぎを聴きながら、春の宵を酔いしれたのであります。
<川ばたの 並木の桜つらなめて けふ散りみたる 麦畑のかたに>
Posted by 小暮 淳 at 18:52│Comments(0)
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