2016年11月25日
伊香保温泉 「横手館」
♪ 雪でした あなたのあとを
なんとなく ついて行きたかった ♪
(by 吉田拓郎)
まだ11月だというのに、関東平野に雪が降りました。
午後、家を出る頃には、前橋の雪は止んでいましたが、登る伊香保の町は雪、雪、雪が降り続いています。
しんしんと積もる雪の中に、凛とそびえる楼閣……。
まるで、映画 『千と千尋の神隠し』 の舞台のよう。
もしかしたら宮崎監督は、ここもロケハンに来たんじゃないの?と思ってしまうほど、威風堂々とした建物であります。
以前から何度も、横手館の前を通るたび、足を止めて見上げていました。
「いつか、泊まってみたい」 と……。
昨日の横手館は雪景色の中で、さらに神々しく、光り輝いて見えました。
玄関をはさんで、シンメトリーに建つ本館の東棟と西棟。
向かって左の東棟が木造三階建て、右の西棟は木造四階建てです。
どちらも総桧造り。
昨年、国の重要文化財に指定された大正9年(1920) の建物です。
「雪の中、ようこそお越しくださいました」
番頭さんに出迎えられ、
「さあさあ、こちらへどうぞ」
と仲居さんに通された部屋は、西棟3階の 「あららぎ」 の間。
昔ながらの襖で仕切られた、2間つづきの和室です。
書院造りっていうんでしたっけ?
部屋ごとに意匠を凝らした趣きがあります。
部屋と窓の間には広縁があり、そのままグルリと部屋を囲むように廊下が配されています。
雪見障子を開ければ、まさに雪景色が目に入ります。
窓のガラスも、懐かしいゆがんだ“昔硝子” です。
今となっては、この製法のガラスを再現できる職人は、ほとんどいないといわれている貴重なものです。
まずは、広縁の長イスに腰かけ、雪見ビールとしゃれ込みましょう。
バックから取り出したのは、若山牧水の文庫本。
<ただ赤城へは此処から七里ほど歩かなくてはならぬ。榛名ならば伊香保まで電車でゆき、あと山上の湖まで二里の路だというので、赤城をばまたの時に思い残しまず榛名へ登ることにする。>(「山上湖へ」より)
1本が、2本、3本……
気が付くと、外の雪も止んでいます。
「さて、ひと風呂浴びてくるか!」
いい宿は、なんだか人を文豪気分にさせてくれるのですね。
Posted by 小暮 淳 at 21:43│Comments(0)
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