2020年03月26日
旅のめっけもん⑩
●旅のめっけもん 「目の湯」
源泉名を 「目の湯」 という。
不思議な名である。
江戸中期、安永のころ。
作男が家路を急ごうと近道をした草むらで、偶然に湯だまりにカエルの群れを発見したのが最初と伝えられている。
その後、囲炉裏や炊事の煙に悩まされた村の女たちが、この湯で丹念に目を洗ったところ、たちまち治り、村から村へその効能が伝わり、「目の湯」 と言われるようになったという。
明治22(1889)年、浅間隠山(あさまかくしやま) の大洪水により、一瞬のうちに埋没してしまったが、昭和38(1963)年に再掘された。
これまでに代は、いく度となく変わったが、この湯は守り続けられ、今でも地元の人たちは 「目の湯」 と呼んで大切にしている。
泉質はホウ酸泉で、医学的にみても目の病に効く。
入浴中、皮膚から極小の泡が出ているのを確認できるが、昔から泡の出る温泉は骨の髄まで温まると言われているとおり神経痛にも特効があり、10日間位の入浴で著効をあらわすという。
宿から露天風呂へ向かう道すがらに、源泉の湯口がある。
ペットボトルに湯を入れて帰る客も多いようだ。
<2005年11月 温川温泉>
●旅のめつけもん 「猪豚 (いのぶた) 」
夕食のテーブルには、丁寧にも 「本日のメニュー」 と記された品書きが置かれていた。
前菜は芋串・沢がに・ふき・栗、造りは刺身こんにゃく、焼き魚は鮎、小鉢はそば粉と大豆を練って揚げた 「鬼揚げ」 と、野趣あふれる地場物をふんだんに使った郷土料理ばかりだ。
そして極めつけは、猪豚鍋(夏季は陶板焼き)。
ここでしか食せない、上野村の特産品である。
猪豚は、メスの豚とオスの猪との交配によって産まれた家畜で、体は太くて丸く、鼻筋は猪に似て長く、体表は剛毛でおおわれ、オスは鋭い牙を持つ。
怒ると毛が逆立ち 「怒り毛」 になるところなど、性格は猪に似ているという。
ところが肉は柔らかくて、臭みがない。
しかも豚肉と比べてタンパク質は1.2倍、鉄分やリン、ナトリウムについても約1.5倍と多く、脂肪はその逆に約半分と少ない。
豚と猪のいいとこ取りした、栄養価に富んだ健康食品である。
ロースやホルモンなどの肉自体も販売されているが、猪豚味噌漬け、猪豚カレー、猪豚汁などの加工品も村内の 「道の駅」 や 「ふれあい館」 で販売されている。
なかでも猪豚生ラーメンは、上野村限定ということもあり人気商品だ。
しょう油とみそ味のスープは、どちらも猪豚の濃厚なダシが利いていて、モチモチの太麺とよくからみ合う。
一食の価値がある未体験の味である。
<2005年12月 塩ノ沢温泉>
Posted by 小暮 淳 at 11:43│Comments(0)
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