2020年03月17日
旅のめっけもん⑨
●旅のめっけもん 「神秘の丸沼」
片品村から日光金精峠へ抜ける国道120号を走ると、原生林の中に大尻沼と丸沼が現れる。
さらに曲がりくねった道を上ると、菅沼に出る。
これらの湖は、日光白根山(2,578m) の噴火によって造られた堰き止め湖で、吸い込まれそうなほどに澄んだ水は、県内屈指の透明度を誇っている。
丸沼は、南北に長い湖である。
なぜに丸沼なのかと疑問に思い、支配人に訊いてみると 「そもそもは丸かった」 という。
昭和5(1930)年のダム建設で水位が上がったため、北の谷が水没して今の形になったとのことだ。
それでも渇水期に水が引けると、元の丸い沼が姿を現すというから、一度見てみたいものである。
宿名の 「環湖荘(かんこそう)」 からも確かに丸い湖であったことが分かるが、しかし創業は昭和8年である。
すでに形は変わっていたことになる。
では、なぜか?
話は明治時代に、さかのぼる。
当時、この沼の持ち主である千明氏が、客人をもてなすための別荘として建てたのが同荘だった。
また氏は、水産講習所と共同して、丸沼にマスを飼養していたということだ。
今でも丸沼は、ルアー、フライフィッシングのメッカとして人気が高い。
ニジマス、ブラウントラウト、イワナ、ヤマメなどが生息しているが、80cm以上のモンスターが上がることも珍しくない。
<2005年9月 丸沼温泉>
●旅のめっけもん 「小石仏群」
部屋にもどると、浴室から眺めていた竹林の手前に、いくつもの愛らしい石仏が段上に並んでいるのが見えた。
これが昔から 「薬師の湯」 の名で近在の人々に親しまれてきた名残である。
観音山丘陵の山里に湧く坂口温泉の歴史は古く、開湯は約300年前と伝わる。
医学の発達していなかった時代のこと、病を治す魔法の湯は、当時の人々にとって頼るすべだったに違いない。
病を治してもらったお礼にと、奉納されたものが、この小さな石仏である。
別名 「医王仏」 とも呼ばれ、人々の病を癒やす霊験あらたかな祈願仏としても守られてきた。
現在は30体余りとなってしまったが、昔はその何倍もあったという。
長い年月の間に、盗難や風化により数は減ってしまったが、残った石仏群は今も大切に保存され、柔和な表情で訪れる人々の心をなごませてくれている。
医学が発達した現在でも、アルカリ度の高い重曹を含む食塩泉は、特に皮膚病に良く効くといわれ、評判を聞きつけた多くの人が、遠方からもやって来る。
<2005年10月 坂口温泉>
Posted by 小暮 淳 at 14:25│Comments(0)
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