2022年01月28日
西上州の薬湯 (4) 「旅の行者が見つけた200年前から湧く秘湯」
薬師温泉 「かやぶきの郷 旅籠」 東吾妻町
草津街道 (国道406号) は大戸の関所を超えると、西へ向かう。
須賀尾宿を抜けるこの道は、江戸時代から信州を結ぶ裏街道として、多くの旅人たちに利用されてきた。
宿場を過ぎると左手の渓流沿いに、小さな温泉郷が現れる。
「温川(ぬるがわ)」 「鳩ノ湯」 「薬師」 からなる浅間隠(あさまかくし)温泉郷だ。
一軒宿ばかりが3軒、ひっそりと佇んでいる。
一番奥に薬師温泉がある。
開湯は寛政5(1793)年。
温泉坊宥明(ゆうめい)という旅の行者により発見されたと伝わる。
鳩ノ湯集落にあった法印本正院の持ち湯であったため 「法印さんの湯」 といわれ、村人たちにも沐浴が開放されていたという。
江戸時代は鳩ノ湯と一体で、薬師の湯を 「上の湯」、鳩ノ湯を 「下の湯」 と言った。
当時は野天の湯治場だったが、昭和になって浴舎ができると 「昭和温泉」 とも呼ばれ、やがて旅館が建ち、薬師温泉と改名された。
旅人を出迎える見事な合掌かやぶき切妻造りの長屋門は、長さ約26メートル、高さ約9メートル。
門の2階に上がれば、約7000坪という広大な敷地に連なるかやぶき屋根を見渡すことができる。
全国から集められた築150年以上の古民家が移築されている光景は、圧巻のひと言。
誰もが時空を超えた旅人となり、江戸の街並みを歩き出す。
町人長屋を通り、かやぶき民家の集落を抜けると、やがて200坪を有する本陣屋敷にたどり着く。
ここが旅館 「旅籠(はたご)」 の帳場である。
湯屋に行く途中に泉源があり、洞窟の奥で沸々と湯が湧き出す様子をモニターを通して見ることができる。
源泉はナトリウム・カルシウム―塩化物・硫酸塩温泉。
うっすらと茶褐色に微濁した湯は、血圧降下や動脈硬化の予防に効果があるといわれている。
館内には源泉風呂のほか、薬湯風呂や露天風呂、貸切風呂など6つの浴場がある。
素朴な山のごちそうが並ぶ 「炭火焼き料理」 が宿の名物だが、近年は郷内で食せる手打ちそばが評判となり、この味を目当てに来る日帰りリピーターが増えている。
<2017年3月3日付>
Posted by 小暮 淳 at 10:53│Comments(0)
│西上州の薬湯