2014年04月03日
2つの 「やすべ」
のん兵衛とは、恐ろしいものです。
「酒を飲む」 と決めたら、何がなんでも飲むのであります。
それも、手間ひまかけて、最高のシチュエーションを設定してまで・・・
先月、上牧(かみもく) 温泉の 「辰巳館」 にて、創業90周年を祝うイベントがあり、我らがスーパーローカルオヤジバンド 「KUWAバン」 のライブが行われました。
当然、その晩は旅館に泊まって、打ち上げと称して酒盛りをしています。
なのに!
「ちゃんと後日、打ち上げをしましょう!」 とバンマスのK氏。
K氏は僕が知る限り、最強の “のん兵衛” であります。
「いいですね~!」 とメンバー一同、賛成。
「では、日時と場所は決まり次第、連絡します」
ということになり、その日は解散しました。
通常ですと、前橋市内の居酒屋にメンバーが集まって、簡単に打ち上げを済ませるのですが、
「どうせなら温泉に泊まって、ゆっくりやりましょう!」
というバンマスの提案により、贅沢にも打ち上げのためだけに旅館を予約したのであります。
しかも平日です。
フリーランスじゃなければできない “飲み技” であります。
と、いうことで昨日は午後から、水上温泉(みなかみ町) へ。
僕とバンマスは、宿に着くなり、まずはビールのロング缶をキューッと1本。
少し遅れて、ベース担当のS君が到着。
「T君(ギター担当) は直接、店に行くそうです」
とのメールを受け、3人はひと風呂浴びて、浴衣に着替え、まだ日没前の温泉街をカランコロンと下駄の音を響かせながら闊歩するのであります。
「ご無沙汰していま~す」
と、のれんをくぐると、
「お久しぶりです。お待ちしていました」
と、瀬川瑛子似のママさんが、満面の笑みで出迎えてくれました。
水上温泉の路地裏にある、ご存知!我らの隠れ家 「湯酒屋 安兵衛」。
えっ、居酒屋じゃないのかって?
いいんですよ、温泉地にある居酒屋ですから “湯酒屋” なんです。
僕がママの許可を取って、勝手に命名しました。
※(命名の由来については、当ブログ2012年12月14日 「一湯一酒 湯酒屋 安兵衛」参照)
安兵衛は、水上温泉でも知る人ぞ知る老舗の小さな酒場です。
客席は、カウンターまわりに、わずか7席。
しかも、狭い!(厨房より店内が狭い)
だもの、一番奥の人がトイレへ行くときは、全員がいったん席を離れなくてはなりません。
不便極まりない店です。
でも、そこが、のん兵衛にたまらない!
飲むというよりは、語る。
語りながら、酔う。
酔いながら、しあわせになれる空間なのであります。
T君も現れて、あらためて乾杯!
やがて常連客も現れて、たった7席の店内は、あっという間に満員御礼です。
そして、お待ちかねの名物 「やすべ揚げ」 の登場!
「待ってました! これこれ、これを食べなけりゃ、わざわざ安兵衛に来た意味がねぇ~!」
「やすべ揚げ」 とは、御歳86歳になられる大ママが、1枚1枚ていねいに揚げてくださる紅しょうがの天ぷらです。
僕は、そのあまりの美味しさから 「やすべ揚げ」 と、これまた勝手に命名させていただきました。
※(やすべ揚げについては、当ブログ2013年7月11日 「名物 やすべ揚げ」 参照)
「えっ、これは何?」
やすべ揚げのとなりに、天ぷらではない茶色のかたまりが登場しました。
「これは、おやき」
「おやき?」
「そう、今しか食べられないフキノトウと青唐辛子のおやきよ」
なに? フキノトウだ!
フキノトウは、僕の大好物でやんす。
「おおおおおおーーーー! か~~らい!」
フキノトウの苦味を追って、青唐辛子の強烈な辛味が舌を刺激します。
でも、うまい!
「では、今回も命名いたします。ズバリ “やすべ焼き” でしょう」
と僕。するとママは、
「ありがとうございます。でも、これは春限定ね」
と、空になったグラスに芋焼酎を注いでくれました。
カラン、コロン。カラン、コロン。
春の宵、湯けむりの町に下駄の音が響きます。
ああ、のん兵衛に生まれて良かった。
のん兵衛だからこそ、出合える喜びがあるのですね。
酒に、感謝!
Posted by 小暮 淳 at 12:52│Comments(0)
│酔眼日記