2018年08月01日
10%のしあわせ
「小暮さんって、お金とお金で買えるもの以外は、すべて持っているよね」
以前、知り合いから、そんなことを言われたことがありました。
もちろん、称賛の意味を込めて言ってくれた言葉であることは分かっています。
でも、その時、僕は、
「なんだよ、それ! ていうことは、人生の9割がた失っているじゃん!」
自虐を込めて、そう返した記憶があります。
残り、たった10%のしあわせに、しがみ付いている人生であります。
昨晩は、酒処 「H」 に3人の弟子たちが集まりました。
「H」 とは、僕が10年以上前から通っている小さな小さな居酒屋です。
“弟子たち” とは、僕のことを勝手に 「先生」 とか 「師匠」 と呼ぶ殊勝な人たちのことです。
僕の講演会やセミナー、講座を通じて出会い、これまた勝手に “弟子の会” なるものを発足させ、2ヶ月に1度、集まるようになりました。
前半は、いつもの飲み会でした。
突然、誰かが 「ママ、お願い」 と言った途端、店内が真っ暗になりました。
「おい、何するんだよ~!」
と、声をあらげたのも束の間、僕の首には金銀ラメのレイが、顔にはエルトン・ジョン風の四角い伊達メガネがかけられ、頭には角のような形をした意味不明な帽子が、かぶされてしまいました。
そして、店内に流れる音楽……
♪ ハッピーバースディ ツウ ユー ハッピーバースディ ツウ ユー
目の前に出されたケーキには、6本のロウソクに火が灯されています。
「さあ、先生、消して消して」
そして僕が、ひと息に炎を吹き消すと、
「還暦、おめでとうございま~す!!!!」
の祝福とともに、パンパンパーンと、店内のあちらこちらでクラッカーが鳴り響きました。
一瞬の出来事に、最初は何が起こったのか分かりませんでした。
でも僕の誕生は、8月8日です。
ひと足先に、弟子たちが僕に内緒で誕生パーティーをサプライズ企画してくれていたのです。
しかも、ママもグルになって。
「はい、これ、我々弟子たちからのプレゼントです」
と手渡された箱は、リボンがけされた立派なものでした。
「これ、今、開けていいのかな?」
「はい、ここで開けてください」
箱の大きさからすると、中身はシャネルかヴィトンの財布だろうか?
でも、そんな物をもらっても、中に入れる金がないよなぁ~。
なんて考えながら箱を開けました。
すると箱の中は上げ底で、たった4枚の紙切れ入っているだけでした。
紙には、こう書かれています。
<祝(温泉マーク)還暦>
<酒処Hご招待券>
<※このチケットは還暦本人「小暮淳」以外の使用を禁ず。>
<※他人への譲渡、またオークション出品等を禁ず。>
そして4枚の紙には、それぞれ1枚ずつ、ママも含め4人のコメントが書かれていました。
『悩みに喝!この券を使えば、たちどころに悩み解消!』
『~人生のスパイス・酒~ご利用は計画的に』
『還暦と思えない若さに乾杯!でも飲み過ぎに注意だワン!』
『いつまでも麦わら帽子にトンボ取網の似合う少年でいて下さい』
もう、ダメです。
あっという間に涙腺が、ぶっ壊れてしまいました。
「あ・り・が・と・う」
みんなに、礼をいうのが、やっとです。
すると、
「やったー!! 小暮淳を泣かせる会、大成功!」
の声とともに、またもや拍手に包まれました。
たった10%のしあわせですが、僕には充分過ぎるようです。
みんな、ありがとう!
そして、これからも、よろしくお願いします。
Posted by 小暮 淳 at 19:24│Comments(0)
│酔眼日記