2023年07月08日
昭和のにぎわい
<中央通りは、今、久し振りに人の波が押し寄せて来ています>
いつもの店のいつものカウンターで、数名の常連客らと酒を呑み交わして時でした。
一本のメールが届きました。
送信主は、前橋市の中心商店街で店を商う友人でした。
「今日は、七夕まつりなんですね」
と僕が言えば、
「そうなのよ、珍しく人通りが絶えないのよ」
とママが応え、
「今さ、通り抜けてきたんだけど、まっさか(かなり)、すごい人だいね」
と常連が言葉を継ぎました。
夏の風物詩 「前橋七夕まつり」 は、昭和26(1951)年から開催されている北関東最大級を誇る祭りです。
でもね、娯楽の少なかった昭和の時代を知っている我々以上の世代からすると、平成以降の祭りは、年々、規模も小さくなり、人出も少ないように映っていたのであります。
それが皆が皆、口をそろえて 「すごい人」 と言うのだから、この目で確かめるしかありません。
「あれ、ジュンちゃん、もう帰るの?」
「ああ、ちょっくら、その “にぎわい” とやらを検証してこようと思ってね」
ママとの会話に、常連が口をはさみます。
「小暮さん、痴漢はするなよ」
「ちかん? なんだい、それ?」
「それくらい若い女の子が、いっぱいいるっていうこと。とにかく、すごい人だから」
そんなヤジに見送られて、僕は早々に店を出ました。
大通りを渡ると、すでにバリケードで規制線が張られ、警官が何人も立っていました。
「本当だ、なんだか物々しい警備だな」
と思って、一歩、中心商店街に足を踏み入れた途端、人、人、人、人……
「うそ!? なんだ、この光景は!?」
目の前は、まるで昭和40年代にタイムスリップしたかのような世界が広がっていました。
色とりどりの吹き流しや短冊が風になびいています。
射的や金魚すくい、たこ焼きに人形焼き……
屋台が軒を並べ、露店商らの声が響きわたっています。
「昭和だよ、昭和だ」
オヤジとオフクロとアニキと出かけた、遠い遠い夏の思い出がよみがえってきました。
あっという間に人波にのみ込まれ、思う方向にも歩けず、ただ流れに任すだけ。
家族連れもいますが、夜ということもあり、圧倒的に若者の姿が目立ちます。
浴衣姿の男女が仲睦まじく、かき氷を頬張ったり、紙コップの生ビールを呑んだり……
ああ、なつかしい。
まだ日本には、こんなにもノスタルジーな世界が残っていたんですね。
でも、令和ならではの光景もあります。
それは、外国人の多さ。
留学生なのでしょうか?
慣れない浴衣を着て、日本の夏を笑顔いっぱいに楽しんでいます。
ん~、いい。
実にいい。
これぞ正しい、日本の夏の姿よ!
それにしても、この人たちは、ふだんはどこに、いるんでしょうかね?
というより、前橋という街に、こんなにも人がいたことが驚きです。
コロナの影響もあり、4年ぶりの完全開催ということも、この人出を招いたんでしょうね。
祭りの喧騒をあとに、ほろ酔い気分で夜風に当たりながら家路をたどりました。
Posted by 小暮 淳 at 12:22│Comments(0)
│酔眼日記