2012年07月22日
ちょっとインドまで② 「これがインド流のご挨拶」
②『これがインド流のご挨拶』
成田空港を昼に飛び発ったA I (エアインディア) 305便は、12時間のフライトを無事終え、予定通りの時刻にインディラ・ガンジー・インターナショナル・エアポート(デリー) へ着いた。
時差は3時間半、まだその日の夜9時である。
さっそくインド流の出迎えを受けたため、入国するのにたっぷり2時間もかかってしまった。
とにかく、すべてに手際が悪い。
入国審査にしろ、税関にしろ、銀行(両替所) にしろ、成田のそれとは段違いだ。
こっちは夜遅く異国に着いたこともあり、気があせっているから、余計にいらだってしまう。
ところが、これがインド流のやり方なのである。
1分1秒の遅れが、1日のスケジュールを狂わせてしまうような国から来た我々には、到底信じがたいことだが、彼らは表情をひとつも変えずに 「ノー・プロブレム(問題ない)」 のひと言で、なんでも済ませてしまう。
では、仕事が丁寧なのかといえば、決してそうではない。
作業の途中で隣の係員と会話を始めてしまうし、自分の担当窓口を離れて後ろのほうでボーっとしているやらで、長蛇の列は一向に前へ進まないのである。
おまけに銀行では、こっちが黙っていれば必ずと言っていいほど、両替を誤魔化す。
気づいて指摘すれば、「バレたか!」 といった笑みを浮かべ、紙幣を放り投げてくる始末だ。
現に、僕の連れは、後で調べてみたらナント!1,000ルピー(約4,500円) もの大金(インドの平均月収にあたる) を誤魔化されていた。
いやはや、入国早々トラブル続出の、なんとも不安な旅の始まりではあるが、これがインド流なのだから仕方がない。
“郷に入っては郷に従え!”
金満国ニッポンの恥さらしにならないためにも、気を長く持ち、したたかに構えなくてはならないようだ。
さて、入国手続きが進むに連れて、僕の気が気ではない心が、さらに緊張を増していくのが分かった。
呼ばれるには呼ばれて、なんとかこの国までたどり着いたものの、はたして選ばれるのだろうか?
「小暮さん、選ばれる人と選ばれない人というのは、どうも空港へ降り立った瞬間に決まるらしいですよ」
社長さんの言った言葉を思い出す。
背中のリュックが急に重く感じられ、緊張がピークに達しようとしたときだった。
空港内でも、かすかに感じていた異臭が、屋外へ出た途端、ツーンと強烈に鼻孔を突いてきたのだ。
うわぁ~~、これだったのか!
動物の臭いとも、排泄物の臭いとも判別のつかない初めて体験する臭いだった。
それが一瞬にして、僕の体に貼り付いてきて、離れようとしない。
その場にジッとしていると、体内にまでしみ込んでくるかのようだった。
しばらくすると鼻も慣れてきたようで、呼吸に対しての拒否反応をしなくなっていた。
一度、思いっきり深呼吸をしてみる。
あれっ?と思う。
もう一度、深呼吸をしてみる。
するとなんだか不思議と、懐かしさを覚えた。
知ってるぞ、この臭い ……
粘土の臭いである。
子どもの頃に遊んだ、あのミドリ色した油粘土の臭いに似ていると思った。
<つづく>
Posted by 小暮 淳 at 16:25│Comments(2)
│ちょっとインドまで
この記事へのコメント
匂い…
オイル、スパイス、川の水や体臭などがブレンドされると、粘土の匂い!
またまた次回が楽しみです。
オイル、スパイス、川の水や体臭などがブレンドされると、粘土の匂い!
またまた次回が楽しみです。
Posted by ぴー at 2012年07月23日 09:59
ぴーさんへ
いよいよ、インドの町を歩き出します。
そこは音と色と臭いと砂ぼこりが渦巻いたミラクルワールド!
不定期の連載ですが、つづきをお楽しみください。
いよいよ、インドの町を歩き出します。
そこは音と色と臭いと砂ぼこりが渦巻いたミラクルワールド!
不定期の連載ですが、つづきをお楽しみください。
Posted by 小暮 at 2012年07月23日 17:45
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