2012年07月26日
ちょっとインドまで③ 「地球のゴミ箱の中を歩く」
③「地球のゴミ箱の中を歩く」
インド、という国の名を聞いて、まず最初に何を連想するだろうか?
カレーライス、牛、カースト、ガンジス川、サリー、タージ・マハル ……
僕にとっても、その程度の知識しかなかった。
出発前に、2、3冊の紀行エッセーや参考資料に一応目を通してはみたものの、それ以上にも、それ以下にもイメージは増減されなかった。
何よりも過敏になっていたのは、やはり病気のことだった。
特にインドを旅するとなれば、コレラ、マラリア、腸チフス、肝炎といった恐ろしい病名が次々と頭に浮かんでくる。
つい、二の足を踏みたくなってしまう。
コレラの場合、現在、WHO(国際保健機構) もインドを汚染地区とはしていないし、最近はコレラの発生がきわめて少ないという。
よって、日本から直接インドへ行く場合には、予防接種は義務づけられてはいない。
それでも、しないよりは、して行ったほうが、いいに決まっている。
出発ギリギリまで迷った末、僕は予防注射をせずに行くことに決めた。
理由は、2つ。
経験者の話によれば、コレラの予防注射は大変強く、高熱を伴うことが多い。
そのために、出発前に発熱してしまい、せっかくのインド行きを断念したという、本末転倒な話も聞いた。
また、予防注射を受けたからといって、100%確実というものでもないらしい。
エイッ、成るようになる!
こうなれば運を天に任せて、いざ、出陣じぁ~!
かくて常日頃、強運の持ち主を自負している僕は、家族の心配を振り切り、ビタミン剤と正露丸をお供に、旅立ったのである。
いざインドへ行ってみると、町はどこもゴミ箱の中を歩いているようだった。
ゴミ箱といっても、日本の “夢の島” に象徴されるような、残飯や紙くず、使い捨てにされた生活用品が散乱しているわけではない。
人の波、体臭、叫び声、エンジン音、色の洪水、砂ぼこり、強烈な陽射し ・・・・
ありとあらゆる騒音と臭いが、五感という五感をすべて刺激してくる。
まさに “地球のゴミ箱” として、僕には映った。
牛が目の前で放尿を始める。
それをかわそうとして路傍へ身を寄せれば、右手に水の入った空き缶を握り締めた人々が、側溝にしゃがみ込んで排便を悠然としている。
ふと、露店の砂糖菓子に目をやれば、ハエが黒山にたかっている。
店主は、それを追い払う様子もない。
“これは、病気にならないほうが奇跡に近いかもしれんぞ ……”
その時、本気でそう思ったものだ。
我々にしてみれば、あまりにも非日常過ぎる光景に、めまいさえ感じていた。
<つづく>
Posted by 小暮 淳 at 10:52│Comments(2)
│ちょっとインドまで
この記事へのコメント
粘土臭 → ゴミ箱・病気
次回が大変興味深いです
次回が大変興味深いです
Posted by ぴー at 2012年07月26日 13:50
ぴーさんへ
次回は、宿に泊まります。
これが、とにかく大変なんです。
次回は、宿に泊まります。
これが、とにかく大変なんです。
Posted by 小暮 at 2012年07月27日 13:31