2014年04月19日
情熱の値打
「いい仕事してますね」
と言われれば、誰だって悪い気はしません。
いえいえ、モノづくりを生業にしている者にとっては、これ以上のホメ言葉はないかもしれません。
「ありがとうございます。でも、金にはならないんですよ」
と、ついつい謙遜するつもりが、グチっぽくなってしまうところが、僕の悪いところです。
せっかく、ほめていただいたのにね。
すると、その社長さんは、
「いえいえ、これからですよ。大丈夫、見ている人は、ちゃーんと見ていますから」
なーんて、しっかりなぐさめていただきました。
ありがとうございます。H さん!
今週は、時間を見つけては、日頃からお世話になっている方々を回って、お礼がてら新刊本を届けています。
お中元やお歳暮などの営業活動は一切しない僕にとっての、唯一の “付け届け” であります。
こうやって年に1回だけ、自分の本を持って回り、感謝の気持ちを伝えています。
今日も午後から 「お礼参り」 に出かけました。
木彫作家のN先生のアトリエは、いつ訪ねてもプーンといい木の香りが漂っています。
「おお、できたかい! いったい何冊目になるんだい?」
「温泉のシリーズでは6作目ですが、著書としては、ちょうど10冊目になります」
そんな話から始まり、コーヒーをすすりながら作家論や人生訓などの、ありがたい教示を受けてきたのであります。
「○○君は、部長になったんだってね?」
とN先生は突然、昔、一緒に飲み歩いていた友人の話をふってきました。
「ええ、彼も出世したものですね」
「あの頃は、『あんな会社、いつでも辞めてやる!』 なんて息巻いていたのにな」
「本当ですね。結局、彼はサラリーマンが向いていたんじゃないですか?」
「だな、あの時、無理やり辞めさせなくって良かったよ」
と言ってN先生は、「ウワッハハハーーーッ」 と、大笑いするのです。
だから僕は、すかさず言い返しました。
「なんで僕が会社を辞めるときには、『情熱だけじゃ、食っていけないよ』 って引き止めてくれなかったんですか!」
すると先生は、
「本当だね、どうして引止めなかったんだろうね。でも、いいじゃん、こうやって “いい仕事” してるんだすらさ」
ですって。
ここでも、でました! 伝家の宝刀 「いい仕事攻め」。
だから、いい仕事じゃ、食えませんって!
でもね、N先生だって “いい仕事” しているんですよ。
そして28年前に “情熱に勝るものは無し” と、僕に人生の価値を教えた張本人なんですから!
N先生、この責任は、とってもらいますよ!
Posted by 小暮 淳 at 20:54│Comments(0)
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