2016年05月11日
この一瞬のために生きている
「カンパーイ!」
いったい僕は、この言葉を今までに何回、口にしたことでしょうか?
何千回? 何万回?
1年365日、ほぼ毎日酒は飲んでいますから、その回数だけ唱えていることになります。
もちろん、一人で飲むときだって 「今日は頑張ったね、ではカンパイ!」 って、ちゃんと心の中で言っていますよ。
そして、すべて楽しくて、おいしい酒です。
僕は、ヤケ酒は飲みません。
その昔、サラリーマンをしていた頃には、数回あったかもしれませんが、この仕事に就いてからは毎回楽しい酒ばかりです。
でもね、そんな飲兵衛の僕でも、一生に何回もない、最高にウマイ酒というのがあるのです。
それは、大きな仕事を成しとげた時に飲む酒です。
その酒の味といったら、どんな高級なワインや日本酒を出されてもかないませんって!
決して、これは言い過ぎではなく、この美酒を飲む一瞬のために僕は生きているのです。
昨日5月10日は、前回報告させていただいたとおり、新刊本の発行日でした。
どんなに忙しくても、他の用が入っていても、この一瞬を味わうために、本の制作に関わったスタッフは、何はともあれ集まります。
まだ外は明るい午後5時半。
前橋市内の安居酒屋に、4人の男たちが顔を揃えました。
ディレクター、デザイナー、カメラマン、そして著者であります。
4人の手には、つい先ほど印刷所から出版元へ届いたばかりの、出来立てホッカホカの本が、それぞれ1冊ずつ握られています。
そして目の前には、生ビールが……。
でも、誰もビールには手をのばしません。
全員が、ページをめくりもせず、ただジッと表紙を眺めています。
それぞれが、それぞれの感慨に浸っているのです。
「そろそろ、いいですかね?」
ディレクター氏の発声で、やっと本をテーブルの上に置き、ジョッキを握りしめました。
「大変お疲れさまでした。おめでとうございます」
「カンパーーーーイ!!!!」
この瞬間、気分は絶頂を迎えます。
この世に存在する快楽のなかで、最高の快感が足の先から頭のてっぺんまで全身を貫いていきます。
<ああ、この一瞬のために生きているんだ!>
そう思ったら僕は、全員と握手をせずにいられませんでした。
「ありがとう」
「ごくろうさま」
「また、よろしく」
同じ釜の飯を食べた戦友たちに、言葉では表しきれない感謝をこめて……。
Posted by 小暮 淳 at 18:47│Comments(0)
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