2022年11月30日
詩人の目 レンズの眼
遊園地(るなぱあく)の午後なりき
楽隊は空に轟き
廻転木馬の目まぐるしく
艶(なま)めく紅のごむ風船
群集の上を飛び行けり。
(「遊園地にて」 より)
前橋市民にとって、「遊園地」 といえば、誰もが 「るなぱあく」 の思い出を語ることでしょう。
「るなぱあく」 は、今でこそ “日本一なつかしい遊園地” として全国に知られるようになりましたが、昔も今も変わらない小さな小さな遊園地なのです。
昭和29(1954)年11月、前橋市が周辺町村との合併を記念して、「前橋市中央児童遊園」 として開園しました。
だから僕ら (昭和30年代生まれ) は、「児童遊園」 と呼んでいました。
「前橋るなぱあく」 と改名されたのは平成18(2006)年のこと。
市民公募により命名されました。
でも、本当に一般公募だったのでしょうか?
少し疑問が残ります。
だって、「るなぱあく」 という名前は、萩原朔太郎の 「遊園地にて」 という詩に由来するからです。
朔太郎は、“遊園地” に、あえて 「るなぱあく」 とルビをふっているのです。
そのことを、どんだけの市民が知っていたでしょうか?
ルナ=月、パーク=公園ですから、直訳すれば “月の公園” です。
でも、ハイカラな朔太郎は、知っていたんですね。
世界には、「るなぱあく」 と呼ばれる移動式遊園地があることを!
やはり、かなりのセンスの持ち主だったのですね。
そんな郷土の詩人、萩原朔太郎の没後80年となる今年は、日本全国52ヵ所の文学館や美術館で 「萩原朔太郎大全2022」 と題した朔太郎をテーマにした企画展が開催されています。
このブログでも、たびたび紹介してきましたが、今日は現在開催中のちょっと変わった企画展を紹介します。
萩原朔太郎は、明治、大正、昭和を駆け抜けた 「日本近代詩の父」 と称される、日本を代表する詩人です。
でも、当時の詩人たちと比べ格段に飛びぬけていたのが、そのハイカラとセンスです。
マンドリンやギターなどの洋楽器に親しんだり、作曲なども手がけています。
そしてまた、カメラも朔太郎を象徴するアイテムの1つでした。
17歳の時に初めてカメラを手に入れて以来、生涯を通してカメラに親しみ、写真を撮り続けました。
アーツ前橋では、朔太郎が故郷、前橋を中心に撮影し続けた風景写真に加えて、朔太郎が撮影した同じ場所で時代を超えて新たに撮影した写真を比較しながら展示しています。
この写真を撮影したのは、朔太郎の孫である萩原朔美さん (前橋文学館・館長) であります。
この展示が、とにかく楽しい!
よくもまあ、大正時代~昭和初期の風景を探し当てたな~と、感心します。
大渡橋や馬場川などの今も現存する風景もありますが、空襲で焼かれる以前の市街地の同じ風景をも探し出しているところが、お見事です。
(朔美さんだけでなく、文学館のスタッフが総力を挙げて、当時の撮影場所を探したそうです)
この企画展は、前期と後期に分かれ、作品の入れ替えがあるところも魅力です。
ぜひ、2回足を運んでみてください。
朔太郎ファンはもちろんのこと、写真オタク、昭和レトロ好きも楽しめます。
萩原朔太郎大全2022
―朔太郎と写真―
●会期 前期=会期中~2023年1月10日(火)
後期=2023年1月12日(木)~3月5日(日)
●会場 アーツ前橋 1Fギャラリー
●開館 10時~18時
●休館 水曜日 (祝日の場合は翌日)
●観覧 無料
●問合 アーツ前橋 TEL.027-230-1144
群馬県前橋市千代田町5-1-16
Posted by 小暮 淳 at 12:00│Comments(0)
│ライブ・イベント