2023年01月08日
なぜ今 『ヨー!サイゴン』 なのか?
「今日、小暮さんに会えるというので、改めて 『ヨー!サイゴン』 を読み返してきました」
Tさんにお会いすると開口一番、そう言われました。
Tさんは70代前半の男性。
現在は定年退職され、悠々自適な生活をされています。
『ヨー!サイゴン』 とは、24年前に僕が自費出版したベトナム旅行記です。
なぜか今になって、この本が、たびたび話題に上がります。
昨年暮れにも、某アナウンサーとの電話で、この本が話題になりました。
※(当ブログの2022年12月30日 「こいつぁ~、暮れから縁起がいいわい!」 参照)
「コロナが終息したら、ベトナムへ行こうと思います。ぜひ現地で、生のアオザイを見てみたくなりました」
アオザイとは、ベトナム女性の民族衣装です。
僕は著書の中で、こう記しています。
<アオザイは完全オーダーメイドである。バスト、ウエスト、ヒップ以外にも、数十箇所を採寸して作られる。体のラインおよび下着のラインまでもシルエットとして強調されるこの衣装は、余程のボディラインの持ち主でなければ着こなせない。>
「いゃ~、読んでいて興奮しました。絶対にベトナムへ行きます!」
Tさんは定年退職後、日本語教師の資格を取り、60代は中国へ渡り、日本語学校で働いていました。
「私の人生はね、クソみたいな60年間だったんですよ。ただ生活のために働き、上司に頭を下げ続けた人生でした。『いつか辞めてやる』 と、いつも思って生きていましたが、ついに定年まで勇気がなかった」
そして、こうも言います。
「こんな意気地なしの自分と、残りの人生を過ごすのかと思ったら死にたくなったんです。でも、そこで初めて気づいたんですよ。死ぬくらいなら、もう一度、人生をやり直してみようって。だから家族に反対されても、中国へ行ったんです」
70歳を前に帰国。
また、「元のありふれた毎日が戻ってきてしまった」 といいます。
そんな時、知人に誘われ入った居酒屋で、僕の本と出合ったといいます。
「読み返して、改めて思いました。実によくできている小説です」
「これはエッセイですよ!」
「いや、私は小説として読みました。特にラストシーンが素敵です」
「ラストシーン?」
すでに書いた本人は忘れています。
「プンさんとの別れのシーンですよ」
「プンさんって、誰でしたっけ? ……ああ、見送りに来た旅行会社の女性ね」
おぼろげに、最後の場面を思い出しました。
「出迎えてくれた時はTシャツとジーパンだったのに、見送りの時はアオザイを着ていたんですよね。あのシーン、グッときました」
<今日は目が覚めるような鮮やかなブルーのアオザイを着ている。入国初日に出迎えてくれたときは、確かTシャツとジーンズ姿だった。その気配りに感謝するとともに、つくづくアオザイという衣装は女性をより美しく引き立てる魔法の衣装だと思った。今日のプンさんは、あの日の百倍は美しい。>
Tさんは、ビールのグラスを手に取り、かかげました。
「ヨー!」
ベトナム語で “乾杯” のことです。
「ヨー! 今年もよろしくお願いします」
と僕も応えました。
『ヨー!サイゴン』 (でくの房/500円) は、一般書店では販売されていません。
毎月、伊勢崎市で開催している 「神社かみしばい」 の会場にて、販売しています。
ご希望の方は、ぜひ伊勢崎神社へお越しください。
今月の開催は、22日(日) です。
Posted by 小暮 淳 at 12:38│Comments(0)
│著書関連