2023年09月28日
なぜムジナは人を化かすのか?
むじな 【狢・貉】
①アナグマの異称。②混同して、タヌキをムジナと呼ぶこともある。
(広辞苑より)
昨日の続きです。
ここ数年、民話をテーマにした講演を依頼されることが多くなりました。
民話の世界には、カッパや天狗、座敷わらし、竜神、雪女、巨人など、現代人には荒唐無稽な主人公たちが登場します。
講演では、映像や写真を使いませんので、受講者には話だけで想像していただくしかありません。
でも、みなさん、カッパにしても天狗にしても、子どもの頃に見た絵本やテレビ、雑誌などで描かれているイラストをイメージされているので、話の解釈に支障はありません。
ところが、意外と 「ムジナ」 を知らない人が多いんですね。
直接、「ムジナってなんですか?」 と訊いてくる人もいます。
決して、若い人とは限りません。
僕よりも年配の婦人から訊かれたこともありました。
ムジナとは、一般的にはアナグマのことをいいます。
時代や地方によっては、タヌキのことをムジナと呼ぶことがありますが、この場合は、ただのタヌキではありません。
何百年と生き続け、人間を化かす術を身に着けた古狸のことです。
では、なぜムジナは人を化かすようになったのでしょうか?
昨日紹介した高崎市倉賀野町に伝わる2つのムジナ話で検証してみましょう。
養報寺が舞台の 『かみそりムジナ』 では、ムジナは豆腐屋の夫婦や和尚さんに化けて若者を騙します。
一方、JR高崎線の倉賀野駅をはさんだ永泉寺に伝わる 『おばけ汽車』 という民話では、列車に化けて人間を脅かします。
話の内容もスケールも違い、まったく別のムジナのようですが、実は同一のムジナ、もしくは一族ではないかと思われます。
その謎を解くカギは、2つの民話が作られた時期にあります。
明治17(1884)年、上野~高崎間に鉄道が開通しました。
同時に、倉賀野町にある2つの寺は鉄道の敷地にかかり、ヤブも林も伐採されてしまいました。
すみかを追われたムジナたちは、仕返しとして人間たちを次々と化かしたのかもしれませんね。
すべて独断と偏見による勝手な解釈ではありますが、舞台があれば、民話が誕生した謎も解けると思うのです。
いや~、民話って面白いですね!
Posted by 小暮 淳 at 11:34│Comments(0)
│謎学の旅