2024年10月29日
秀作は盃の数より生まれ
天高く 肝臓冴える 酒徒の秋
待ちに待った秋が、やって来ました。
食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋……
秋の楽しみは色々ありますが、やっぱり、のん兵衛は 「酒徒の秋」 であります。
まあ、僕の場合、1年365日、酒は欠かさないので、秋だけに限ったことではないのですが、それでも秋は格別、酒がうまく感じます。
主役も変わるんですね。
暑い夏はビール、寒い冬は日本酒がメインですが、この時季は、がぜんウィスキーです。
あの琥珀色が、秋の気配に似合うんでしょうな。
カラカラとグラスの氷を揺らしながら夜長を過ごすのは、至福の時間であります。
そうなると、お伴が必要となります。
僕の場合、長年の友は、読書です。
「読書の秋」 と 「酒徒の秋」 という二大スターの共演です。
酒を呑みながら読む本とは?
ミステリーやエッセイもいいですが、そのものズバリ! 酒の本というのも乙なものであります。
文豪たちの酒にまつわる随筆がお気に入りですが、今日は、ちょっと変わった酒の本を紹介します。
『日本酒の愉しみ』 文藝春秋編 (文春文庫)
日本酒の造られ方から有名蔵元のルポと、酒好きには読んでいて飽きないのですが、僕が興味を抱いたのは、著名人たちの酒にまつわるエピソードです。
中でも、日本映画界の巨匠・小津安二郎監督の愛し方が秀逸です。
昭和30(1955)年、脚本の執筆拠点を茅ヶ崎から長野県の蓼科へと移し、晩年まで続けました。
生前の小津監督を知る地元の人たちの話によれば、「いつも酔っぱらっているヘンなオヤジ」 だったといいます。
その呑んだ量も半端なかったようで、シナリオ制作中は、空にした一升瓶に番号を付けて並べ、仕事の進行の目安にしていたという。
当時の日記には、こう記されています。
<酒を汲む杯の数少なければ、秀作は生まれぬべし。秀作は盃の数より生まれ、なみなみと盃に酒は満つ可(べ)し。>
恐れ入りました!
巨匠たるもの酒豪なくして、名作は生まれないのですね。
その酒の名は「ダイヤ菊」。
長野県茅野市の地酒であります。
さて、どんな味なのか?
近々、手に入れて、巨匠気分を味わいと思います。
読者の中で、呑まれた人がいましたら、ぜひ感想をお寄せください。
Posted by 小暮 淳 at 13:03│Comments(0)
│読書一昧