2012年10月05日
湯宿温泉 「常盤屋旅館」
<今度また湯宿に来てしまった。これが二度目ではない。もう何度も来ているのだ。何を好んでといわれても答えようがない。ふと思い出すと来てしまうのだ。>
<湯宿は六年前とあまり変わっていなかった。六年前のときは常盤屋という宿に泊まった。詩人のSさんを案内したのだった。Sさんは 「これでも温泉ですか。絶望的ですね」 と感想をもらした。>
『上州湯宿温泉の旅』 より
漫画家のつげ義春は、昭和40~50年代にかけて、たびたび湯宿(ゆじゅく) を訪れています。
つげファンなら、とりあえず押さえておきたい温泉地ですね。
僕もファンのひとりですから、訪ねるたびに “つげ的風景” を探して、見つけては、歓喜しています。
代表作の 「ねじ式」 や 「ゲンセンカン主人」 の背景や舞台になったことでも有名です。
で、今回は、随筆の中でも、たびたび登場する 「常盤屋(ときわや)」 を取材してきました。
とにかく、一度は訪ねてみたい宿でした。
「私どもの代で建て替えてしまったものですから、つげ先生が泊まられた当時の部屋は残っていないんですよ」
と、3代目女将の岡田みつ子さん。
女将さんは、僕と同世代なので、昭和40年代はまだ子供でした。
つげ義春も無名の頃ですから、「泊まったことすら知らなかった」 と言います。
「でも、いまでも時々は、全国から先生のファンという人が泊まりに来られますよ。 『ここんちのことが書いてあるから』 なんて、資料やコピーを置いて行かれます。でも、あまり、うちのことは良く書いてないんですよね(笑)」
女将さんは、 『上州湯宿温泉の旅』 の中の、この一節のことを言っているようです。
<やはり温泉らしさがなく、暗く沈んだ印象だったからだろう。それと宿屋の食事が貧しかったせいもあるかもしれない。サツマ芋の輪切りの煮たもの、サツマあげの焼いたものが皿にペタンと一枚、それが夕食の中心だった。>
それでも、つげ義春は、何度も湯宿温泉に通って来ている。
やっぱり、このひなびた感が、好きだから “ふと思い出すと来てしまう” んでしょうね。
また、つげ義春は 『旅日記』 という随筆の中の対談で、湯宿温泉のことをこんな風に言っています。
<あれですよ、温泉らしいムードなんて何もない。ふつうの民家があって、その中に民宿が四、五軒あるだけなんですよね。だけどふつうの民家ってのが、昔の三国街道の宿場なんですよ。だから、宿場の面影があって、道を通り過ぎると温泉と気が付かないで行っちゃいそうだけど、ちゃんとホントに温泉は出ているんですよ。で、昔の宿場のたたずまいだから、家なんか崩れかかって貧しい感じなんですよね。温泉なんていうとネオンがついてなんていうのと全然違う感じなんです。で、宿代も安いし。湯治場なんですよね。>
と、かなりの気に入りようであります。
つげ義春が訪ねていた頃から比べたら、湯宿温泉も変化していますが、それでも他の観光温泉地と比べれば、彼が感じた “ひなびた感” や “宿場の面影” は、今でも充分に残っていますよ。
まさに、現代に残った奇跡の湯治場と言えるかもしれませんね。
2012年10月04日
湯宿温泉 「太陽館」
2日間のご無沙汰であります。
またしても取材旅行へ出かけておりました。
今回は、開湯2000年の歴史を持ち、群馬の “あつ湯” として温泉ファンに知られている湯宿(ゆじゅく) 温泉に入り込み、取材をしてきました。
そして、一昨晩は、ご厚意により明治初期開業の老舗宿、「太陽館」 に泊めていただきました。
太陽館と言えば?
(ヒント:マラソン)
これだけで、「瀬古選手!」 と答えられた人は、かなりの瀬古ファンか、湯宿温泉通ですね。
そうなんです。
僕は今回、なにか瀬古選手にまつわるモノやエピソードがないかと、楽しみにしながら訪ねたのであります。
マラソン選手の瀬古利彦さんは、早稲田大学の学生時代から監督や他の部員らと、年に1、2回は太陽館に訪れて、合宿をしていました。
当時は、瀬古選手が有名になるに連れて、全国からファンがやって来たといいます。
「今はやってませんが、その頃には特別メニューとして 『瀬古メニュー』 なんていう、ボリュームたっぷりのスタミナメニューがあったんですよ」
と5代目主人の林正史さん。
当時はまだ子どもだった林さんが、瀬古選手と一緒に写っている写真が飾ってありました。
で、で、で、でーーーーっ!
あったんですよ!
超レアなお宝がーーー!
ジャーン!
それは、瀬古選手が履いたシューズです!
それもなんと、1984年のロスオリンピック出場の際に、現地で練習用に履いていたアシックスのシューズであります。
僕も手にとってみましたが、とにかく軽いんですね。
そして、すり減ったシューズ底のリアル感がたまりません。
オリンピック終了後に、手紙と一緒に、瀬古さん自身から 「お世話になったから」 と宿へ送られてきたそうです。
う~ん、まさに “宿の数だけ物語がある”んですね。
これだから温泉宿の取材は、飽きることがありません。
2012年10月01日
県内屈指の温泉町
今年の4月から、毎月ゲストコメンテーターとして出演している群馬テレビ 「ニュースジャスト6」。
今月の出演は、今週木曜日(4日) です。
毎回、この番組では、僕がニュースにコメントをするだけでなく、「NJウォッチ」 というコーナーで温泉の話をしています。
今月のテーマは、ズバリ! 『みなかみ18湯〔上〕』 出版秘話であります。
“なーんだ、本の宣伝か~” ですって?
ハイ、そうです!(笑)
でもね、では、なんで 「みなかみ18湯」 なのか?
どーして僕は、本を出そうと思ったのか?
そんな、出版にまつわるエトセトラをお話ししようと思っています。
ちなみに、「水上」 と 「みなかみ」 の違いは、分かりますか?
実は、結構、知らない人が多いんですよね。
特に群馬県民は、「ミナカミ」 と音だけで言葉を聞くと、漢字の 「水上」 を思い浮かべてしまうんです。
それは、水上温泉と旧水上町のイメージが色濃く脳裏に焼きついているからです。
でも現在は、「水上」 と漢字で書けば、それは水上温泉のことを指します。
または、JR上越線の水上駅のことです。
平成17年に、旧水上町と旧月夜野町と旧新治村が合併して、平仮名の 「みなかみ町」 が誕生しました。
これにより、水上温泉郷 (8温泉地) と月夜野・上牧温泉郷 (4温泉地) と三国・猿ヶ京温泉郷 (6温泉地) は、すべて 「みなかみ町」 となりました。
みなかみ町は、18カ所の温泉地を有する群馬県内屈指の温泉町となったのです。
で、僕は昨年の秋から1年半かけて、この18温泉地にある75軒すべての旅館(※) を訪ねて、本にまとめようとしているのです。
※(みなかみ町観光協会加入旅館)
先月出版した上巻では、水上温泉と猿ヶ京温泉の全34旅館を紹介しています。
番組では、上巻の取材の苦労話や2つの温泉地の魅力について、お話します。
また出版元の上毛新聞社より、著書 『みなかみ18湯〔上〕』 の視聴者プレゼンがあります。
ぜひ、番組の最後までお見逃しなく!
●放送局 群馬テレビ(地デジ3ch)
●番組名 「ニュースジャスト6」
●放送日 (月)~(金) 18:00~18:45
●出演日 10月4日(木)
●テーマ 群馬の温泉シリーズ第4弾!
『みなかみ18湯〔上〕』 出版
~水上温泉・猿ヶ京温泉~