2014年03月19日
「あとがき」 を終えて
僕はふだん、原稿を書きながら酒を飲むことはありません。
どんなに遅くなっても、その日、自分に与えたノルマだけは書き上げ、それから風呂に入り、じっくりと疲れを取りながら酒を飲みます。
だから毎日、床に就くのは、午前の2時~3時頃。
ときには、朝を迎えてしまうこともあります。
でも、1年に1度だけ、僕は原稿を書きながら酒を飲みます。
それは、本の 「あとがき」 を書くときです。
僕の場合、本を1冊仕上げるのに、約1年間かかります。
取材をして、原稿を書いて、デザイナーに渡すまでが僕の仕事です。
今回の新作を例にとると、約10ヶ月の間に54軒の温泉宿を取材しました。
なるべく原稿を貯めないように、他の仕事の合間にコツコツと書いてきました。
この間に、本文のなかに入るコラムや前書き、プロフィールなども、ヒマを見つけて書きためておきます。
ちなみに今回の原稿量は、原稿用紙に換算して約180枚。
そして、すべての原稿を送り出すと、文字通り最後に残る原稿が 「あとがき」 です。
登山でいえば、九合目を過ぎて山頂が指呼の間に見えた頃。
マラソンでいえば、残り1キロに差しかかったあたりでしょうか。
とにかく、この原稿さえ書き上げれば、苦しかった長い長い闘いの日々から解放されるのです。
もちろん、はやる気持ちはあります。
早く書き上げて、自由になりたいというあせる気持ちもあります。
でも、ここからが年に1度の自分への “ご褒美タイム” なんです。
本の製作は “旅” と同じで、終わってしまうと淋しいものなのです。
だもの、旅の終わりくらい、あせらず、はやらず、ゆっくりと楽しみたいと思うのです。
ですから僕は年に1度、「あとがき」 の執筆だけは、何時間かかってもいいから、大好きな酒を飲みながら書くようにしています。
そうやって今回も、旅の余韻を味わいながら 「あとがき」 を書き上げました。
今、また大きな仕事を成し終えた充足感に包まれています。
苦労したぶん、いいものが作れたと自負しています。
温泉シリーズの6作目。
著書としては、記念すべき10冊目となります。
約1ヶ月半後、ゴールデンウィークまでには、書店に並ぶことでしょう。
Posted by 小暮 淳 at 21:51│Comments(0)
│執筆余談