2018年03月17日
とんでいけ~!
歯痛は、忘れたころにやって来るのであります。
今週、突然、疼痛に見舞われました。
初日は、ズキンズキンと小刻みの痛みだったのですが、翌日には、半鐘を打つような激しい痛みに変わりました。
ところが、行きつけの歯医者は定休日。
他の医者を探そうにも、その日はスケジュールが詰まっていて、自由に動ける時間がありません。
鎮痛剤を飲んで、なんとか1日を乗り切りました。
ところが、その夜のことです。
鎮痛剤を飲み過ぎたせいかもしれません。
体がだるくて、悪寒もし、風邪のような症状になり、自宅に帰るなり、そのまま酒も飲まずに布団にもぐり込んでしまいました。
でも、歯の痛みで眠れません。
1時間、2時間……、時間だけがいたずらに過ぎていきます。
時おり、うとうとと眠気がやってきます。
このまま、眠ってしまいたい。
朝まで、目が覚めないでほしい。
と思ったのも束の間。
突如、ズキーン、ズキーンと、激しい痛みが襲います。
「ああ、痛い。痛いよ~。助けてくれよ~」
夢ともうつつともつかぬ闇の中で、僕は誰にともなく叫んでいました。
その時です。
遠く暗闇の奥から、声がするではありませんか。
「イタイの、イタイの、とんでいけ~!」
その声の主は、なんとオヤジだったのです。
そう、あの90歳を過ぎた認知症の老人です。
でも、今のオヤジではありません。
50年以上も昔の、若き日のオヤジの声です。
当時の僕は、小学校の低学年。
虫歯が痛くて、泣いた夜がありました。
その時、オヤジは一晩中、僕の布団の隣で添い寝をしてくれました。
そして、茶碗に入れた甘茶を指にひたしては、僕の頬をさすりながら、
「イタイの、イタイの、とんでいけ~!」
と、おまじないを唱えてくれていたのです。
不思議なことって、あるものですね。
この歳になって、突然、そんな忘れていた記憶がよみがえってくるなんて。
「イタイの、イタイの、とんでいけ~!」
闇の中で、おまじないが繰り返され、やがて僕は眠りにつきました。
翌朝、一番乗りで、歯医者に駆け込んだことは、言うまでもありません。
おかげさまで、痛みは取れました。
今日は天気もいいし、午後は入院しているオヤジを見舞いに行ってこようと思います。
たぶん、僕のことは分からないと思いますが、窮地を救ってくれたお礼を言いに……
Posted by 小暮 淳 at 13:15│Comments(0)
│つれづれ