2020年05月11日
文士かくありき
カボチャの冷たいスープ、から始まり、
尾頭付き真鯛の塩焼き、茶碗蒸しの磯のり添え、木の実のかやく飯、オクラのお吸い物、に至るまで……。
その間にも、酒のあてとして、
手作りツナ(マグロ)、あぶりチャーシューのわさび醤油、茹でシラス、などなど、手の込んだ一品が次々と食卓に並びました。
以前、文筆家の木部克彦氏のお宅に、お邪魔したときの、もてなしのされようです。
すべて、氏本人が一人で作った料理です。
以前から氏の料理の腕前は有名で、料理関連の著書を出版していることも知っていましたが、目の当たりにすると、ただただ息をのむばかりでした。
この時、僕は、あまりにも自分との “才” の違いに、打ちひしがれた記憶があります。
同じ人として、同じ男として、同じ年齢であり、同じ職業に就きながら……
いったい、この違いはナンダ?
氏との出会いは、ちょうど10年前になります。
群馬県内のメディアに係わる人たちの集まりがあり、その席で初めてお会いしました。
その後、何度か別の宴席でも顔を合わせましたが、親しくなったきっかけは、氏が2012年10月に出版した『続・群馬の逆襲』(言視舎) でした。
前作の 『群馬の逆襲』(彩流社) がベストセラーとなり、すでに全国で 「~の逆襲」ブームが巻き起こっていた最中の待望の続編です。
「次の本で、小暮さんのことを書かせてよ」
冗談だと思っていた氏の言葉に、二つ返事で了承すると、本当に書かれてしまいました。
著書の中では、「温泉バカ一代」 「天下無敵の温泉フリークの星」 などと揶揄(?) されながらも、5ページにわたり、僕のことを “群馬の宝” として紹介してくださいました。
そんな木部氏が、このたび、またまた本を出版しました。
『夢に住む人 認知症夫婦のふたりごと』(言視舎)
氏は、認知症になった両親の介護に関しては、すでに2年前、『認知症、今日も元気だい 迷走する父と母に向き合う日々』 という日記風のエッセイを出版しています。
今回は、続編ともいうべき2作目で、ノンフィクションの小説仕立てになってます。
<家族の、地域の、医療と福祉の、社会のちょっとした支えがあれば、認知症なっても楽しく生きられる。>
と氏は、新聞でコメントしています。
僕も寝たきりの母と、認知症の父を長年介護しましたから、氏の思いは手に取るように分かります。
ただ、僕と氏の違いは、そのことを “著する” かいなかであります。
ここでも、また、才の違いを見せつけられてしまいました。
文士たるもの、かくありきなのですね。
Posted by 小暮 淳 at 12:17│Comments(0)
│執筆余談