2021年01月08日
音のない街
<本来、人間は生活の中では 「音」 と 「におい」 を発するものなのだ。同時に、それは人と人が触れ合うために生じる生活雑臭音だといえる。もし、町の中から音とにおいが消えてしまったとしたら……>
この一文は、今から24年前に出版した処女エッセイ 『上毛カルテ』(上毛新聞社) に収録されている 「いつか見ていた風景」 から抜粋したものです。
当時、すでに僕は、街の中から 「音」 や 「におい」 が消えて行くさまを憂いていました。
若い頃からバックパッカーにあこがれ、アジアの国々を旅していた僕は、きっと今よりも 「音」 や 「におい」 に敏感だったのだと思います。
<人が暮らしている証拠として発せられる音とにおいが、私の聴覚と嗅覚には、逆に新鮮に感じられたのである。けたたましい車のクラクション、せわしない自転車のベル、路地から聞こえる子供たち喚声、そして家々からこぼれてくる生活する音たち。露店の肉や野菜の臭いに混じって、時折、強烈に鼻孔を刺激してくる生活雑水の悪臭さえ、ナチュラルなものとして受け入れることができた。>
「保育園の子どもの声がうるさい」 「除夜の鐘がうるさい」 「盆踊りの唄がうるさい」 「花火大会の音がうるさい」 「小学校の運動会がうるさい」……
昭和の時代には当たり前にあった風景が、平成になり洗練され、そして令和になって消滅しようとしています。
また1つ、全国で音が消える現象が起きています。
視覚障害者に青信号を知らせるために整備されている音響式信号機のうち、8割超が音の出る稼働時間を制限しているとのことです。
理由は、近隣住民への配慮や苦情を受けてのようですが、この稼働停止中に視覚障害者の死亡事故も発生しています。
で、僕は思いました。
なぜ、昭和の人たちは、音に無頓着だったのだろうか?
なぜ、令和の人たちは、音を不快に感じるようになってしまったのだろうか?
そして、僕がたどり着いた答えは、「お互いさまの心」 です。
向こう三軒両隣、助け合って生きていきましょうよ!の思いやりの心です。
思えば子どもの頃は、“うち” も “隣んち” もなく、味噌やしょう油の貸し借りをしていたし、風呂だって入りに行き来していました。
それこそ、夫婦げんかの声だって、筒抜けでしたものね。
僕はエッセイで最後に、こう綴っています。
<不便な町が良いのではなく、人が手をかけた町は、きっと温かいはずである。そしてそこには、その町だけの 「音」 と 「におい」 があるはずなのだ。>
Posted by 小暮 淳 at 11:15│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今回のテーマの、音について思い当たることがあるので書かせていただきます。
昭和の音に無頓着だったのではなく、昭和の音は、心地よかったので気にならなかったのではと思います。
汽笛の音、ポン菓子の音、夫婦げんかの声も日本語なので理解できた、自動車のエンジン音もそれなりに好きでした。
現在の音は、スマホの着信音、救急車のサイレン、日本語でない大声、エンジン音がしないで近づいてくる自動車等、どれも不快な音だらけです。
もっと人間の本能に迫るような、気持ちの良い音が増える世の中になればよいなあと思っています。
今年もよろしくお願いします。
今回のテーマの、音について思い当たることがあるので書かせていただきます。
昭和の音に無頓着だったのではなく、昭和の音は、心地よかったので気にならなかったのではと思います。
汽笛の音、ポン菓子の音、夫婦げんかの声も日本語なので理解できた、自動車のエンジン音もそれなりに好きでした。
現在の音は、スマホの着信音、救急車のサイレン、日本語でない大声、エンジン音がしないで近づいてくる自動車等、どれも不快な音だらけです。
もっと人間の本能に迫るような、気持ちの良い音が増える世の中になればよいなあと思っています。
Posted by ヒロ坊 at 2021年01月08日 11:58
ヒロ坊さんへ
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
なるほど、世の中が便利になると、音の質も変わるということですね。
生前、オヤジが言っていた 「不便は必ずしも不快ではない」 という言葉を思い出しました。
便利になっても不快な世の中では、意味がありませんね。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
なるほど、世の中が便利になると、音の質も変わるということですね。
生前、オヤジが言っていた 「不便は必ずしも不快ではない」 という言葉を思い出しました。
便利になっても不快な世の中では、意味がありませんね。
Posted by 小暮 淳
at 2021年01月09日 10:38

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