2021年07月10日
下流住民に聞け!
「線状降水帯」
この五字熟語、テレビのニュースで聞かない日がありません。
すっかり馴染みの言葉になりましたが、いったい、いつ頃から、この気象専門用語を私たちは知ったのでしょうか?
と思い、調べてみました。
平成26(2014)年に発生した広島市の大規模土砂災害からなんですってね。
それ以前は、ただの 「集中豪雨」 でした。
線状降水帯とは、複数の積乱雲の集合体です。
それが次から次へと湧き起こるため、一ヶ所に留まり、大量の雨を降らせます。
ひと言でいえば、異常気象です。
昔では、ありえなかったことですから、これも地球温暖化の影響といえるかもしれません。
今年の梅雨も、また静岡県熱海市で、大規模な土石流災害が発生し、人家と人命をのみ込んでしまいました。
発生から一週間、いまだに20人が安否不明です。
なぜ、水害は起きてしまったのでしょうか?
先人たちは、教訓を残していなかったのでしょうか?
答えは、被災者の言葉にありました。
「生まれてこのかた、何十年と暮らしているけど、こんなことは一度もなかった」
ということは、自然の地形自体が変わってしまったという疑念が浮かびます。
事実、過去に上流で “盛り土” がされていたことが判明しました。
これは、天災ではなく、人災?
僕は、土石流や土砂災害、水害のニュースを耳にするたびに、死んだオヤジの言葉を思い出します。
「山の開発は、下流住民の声を聞け!」
オヤジは晩年、自らの水害体験から自然保護の大切さを訴えるための講演活動をしていました。
その体験とは?
昭和22(1947)年9月14日から15日にかけて、関東~東北~北海道を襲ったキャサリン(カスリン)台風です。
オヤジは濁流に流されながらも銀行の鉄柵につかまり、九死に一生を得ましたが、大勢の友人知人を失いました。
原因は、戦中戦後に行なわれた赤城山の森林乱伐でした。
保水力を失った山肌は、山津波となり下流の町をのみ込みました。
その下流の町が、オヤジが生まれ育った大胡町 (現・前橋市) です。
※(詳しくは当ブログの2013年8月7日 「オヤジ史②キャサリン台風」 を参照)
今回の熱海市の災害も、原因は伊豆山の開発にありそうです。
宅地造成や太陽光発電パネルの設置、産業廃棄物の不法投棄……
開発は一見、生活を便利にし、人生を豊かにしそうですが、それは開発された地域の話です。
山の場合、“先住民” は下流の住民たちなのです。
代々暮らす自分たちの土地の上に、建造物や道路、レジャー施設などができれば、必ずや “水の道” は変わります。
先祖からの 「ここは安全な土地だ」 という教えは、通用しなくなってしまうということです。
「山の開発は、下流住民の声を聞け!」
テレビのニュースを見るたびに、オヤジの声が聞こえてきます。
Posted by 小暮 淳 at 12:47│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
「水の道は変わる」この言葉にハッとさせられました。そうですよね‼️それからお湯の道も変わりますよね……う~む
Posted by お汁粉ちゃん at 2021年07月12日 16:40
お汁粉ちゃんへ
その通り!
「湯の道」も同じです。
上流にゴルフ場やスキー場ができたことにより、源泉が枯渇してしまった温泉地があります。
その通り!
「湯の道」も同じです。
上流にゴルフ場やスキー場ができたことにより、源泉が枯渇してしまった温泉地があります。
Posted by 小暮 淳
at 2021年07月12日 19:34
