2022年01月16日
画家として生きる
『久保繁 展』
今年も年賀状が届きました。
毎年、彼の年賀状には、大きく、そう印字されています。
かれこれ20年間も続いています。
平成11(1999)年、春。
僕は同級生の久保繁と、ベトナムへ旅立ちました。
「この旅を終えたら、何をする?」
「俺は、個展を開く」
「だったら俺は、本を書くよ」
そして、その年の秋、僕らは前橋市内のデパートと画廊で、「二人展」 を開催しました。
彼は水彩画の展示、僕は著書の販売をしました。
『ヨ―!サイゴン ~ベトナム旅行記~』 (でくの房)
もちろん、この本の中の、もう一人の主人公が彼です。
そして、この展示会を機に、彼は長年勤めていたデザイン会社を辞めました。
「画家として生きる」
そう、僕に宣言したのです。
あれから23年……
彼は前橋と逗子にアトリエを構え、東京・神奈川・群馬で個展を続けています。
なかでも毎年1月に前橋市の画廊で開催している 『久保繁 展』 は、僕にとっても大切な新年の行事となりました。
仲の良い同級生といっても、そうは会えません。
でも、地元で開催する新年最初の個展には、必ず彼も顔を見せます。
年に一度、旧友が再会できる絶好の機会なのです。
「よう」
と言えば、
「よう」
と応えます。
新年のあいさつと近況報告をすませ、僕らは画廊の中を歩きながら、互いの創作活動について語り合います。
「大したもんだよ」
「何が?」
「こうして、ちゃんと絵を描いている」
「ジュンだって、文章を書いているだろ」
そう言い返してくれたけど、何かが違う。
何が違うんだろう……
彼の絵を見ていると、沸々と血潮のようなパッションを感じる。
有り体に言ってしまえば、情熱だ。
はたして、僕には、その情熱があるだろうか?
「なあ、お前に絵を描かせているモノって何だ?」
「なんだって言われてもな」
「原動力だよ」
デザイン会社に勤める一介のサラリーマンだった彼に、「画家として生きる」 とまで言わせた、その原動力って何なんだろう……
自信だろうか? 才能だろうか?
少し沈黙があって、困ったような顔をした彼のマスクの中が動いた。
「だって、これしかないもの」
“しかない”
なんて強いんだ!
“しかない” 人には、絶対かなわない。
だって守るモノが、それしかないのだから!
画廊を出た僕は、自問自答を繰り返していました。
自分には “しかない” ものって、あるだろうか……
「彼のように強くなりたい」
そう思った帰り道でした。
『久保繁 展』
~Souvenirs du voyage~
●会期 2022年1月15日(土)~23日(日)
10:30~19:00 (火曜休廊/最終日17:00まで)
●会場 画廊 翠巒(すいらん)
前橋市文京町1-47-1 TEL.027-223-6311
Posted by 小暮 淳 at 09:57│Comments(0)
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