2022年06月28日
老翁A
♪ じれったい じれったい
何歳(いくつ)に見えても アンタ誰でも
じれったい じれったい
ジジイはジジイだ 関係ねぇぜ
特別じゃない どこにもいるぜ
ア・ン・タ 老爺A
(中森明菜 「少女A」 のパクリ)
行きつけの居酒屋で、最近、顔を合わせる爺さんがいます。
僕から見て “爺さん” なのですから、見た目、70代後半から80代前半です。
この爺さん、何度かカウンター席で隣同士になったことがあり、少しだけ素性が分かってきました。
・一人暮らし
・生涯独身
・資産家
まあ、どこにもいるような爺さんなのですが、一つだけ他の客から煙たがれていることがあります。
それは、やたらと他人に年齢を訊くのです。
過去には僕も訊かれましたが、そのトークが毎回、同じなんです。
先日も初めて来店した年配の男性客に対して、
「お見受けのところ、私とご同輩のようですが、おいくつですか?」
と、ぶしつけに声をかけました。
一瞬、ムッとする男性。
そして、こう切り返しました。
「まあまあ、いくつでもいいじゃありませんか。こういう場では、年齢は関係ありませんよ。楽しく呑みましょう」
少し離れた席で吞んでいた僕は、「また始まったぞ」 と次の展開を予想していました。
この爺さん、他人に年齢を訊くのは、落語でいえば “まくら” のようなものなんです。
本題は、この後の自慢話にあります。
「では、私はいくつに見えますか?」
おいおい爺さん、女性じゃないんだから、いきなり年齢当てクイズかよ!
どう見ても70代後半~80代前半に見えますって。
当然、男性は、
「私と同世代でしょ?」
と答えます。
すると爺さん、
「ということは、あなたはおいくつですか?」
「76ですけど」
と、まんまと相手の歳を聞き出してしまうのです。
(これが、いつもの手口です)
さて、ここから爺さんの十八番が始まります。
「私はね、78歳なんですよ」
(見た目、そのままです)
「見えないって、言われるんですよ」
(だから、見た目そのままだって)
「いくつに見えます?」
(78歳だよ)
「65歳だって言われるんですよ」
(絶対に見えません)
男性客は、すでに背中を向けていました。
これ、いつものパターンなんですね。
面倒くさい爺さんなんですけど、この会話が、ちょっとクセになっています。
新しい客が爺さんの隣に座ると、「早く訊かないかな」 「あ、訊いた!」 「次は自慢話だぞ」 「出た~!」 って、カウンターの隅で、ほくそ笑んでいる自分がいます。
ママいわく、
「あの人、さみしいんだよ」
居酒屋は、まさに人間交差点 (ヒューマン・スクランブル) であります。
Posted by 小暮 淳 at 11:19│Comments(0)
│酔眼日記