2022年10月26日
「末期の酒」 in 笠懸野
長いメールが届きました。
こんな書き出しで始まっていました。
<来週火曜日、笠懸野文化ホールで講演と落語をやることになっておりまして、先方のご指定で 『末期の酒』 をやることになっております。>
「末期の酒」 とは?
一昨年9月、僕は高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」 に、≪忠治外伝 末期の酒 「牡丹」 を探しに≫ という記事を書きました。
嘉永3(1850)年に国定忠治が関所破りの罪で、大戸 (群馬県東吾妻町) の処刑場で磔(はりつけ)の刑に処せられた際、“末期の酒” に選んだのが 「牡丹」 という酒だったという内容でした。
この記事が発端となり、忠治ファンや地酒マニアの間で、ちょっとしたムーブメントが起き始めました。
昨年3月、群馬テレビ 「ぐんま!トリビア図鑑」 で、『伝説のお大尽 「加部安」 とは?』 を放送。
番組では、僕がリポーターとなり、当時 「牡丹」 を醸造していた 「加部安」 こと加部安左衛門の酒蔵跡を訪ねました。
この番組の冒頭とエンディングに流れたのが、落語の 『末期の酒』 でした。
『末期の酒』 は、前橋市在住のアマチュア落語家、都家前橋(みやこや・ぜんきょう) さんの創作落語です。
前橋さんと僕は、呑み屋の常連同士。
「ちいきしんぶん」 の記事を見せたところ、いたく感動して、この話を落語にしてくださったのでした。
さて、群馬テレビで放送されると、「末期の酒」 は、各方面で反響がありました。
たとえば朝日新聞は、≪国定忠治の最期の一献 落語に≫ と見出しを付けて、大々的に報道。
これに触発され、がぜん奮起したのが、都家前橋さんであります。
「番組で放送されたのは、ほんのさわりの部分だけ。ちゃんとした落語に仕上げたい」
と一念発起!
『末期の酒 ~牢番編~』 を完成させ、昨年9月よりYouTubeにて配信が始まりました。
実は都家前橋さんの本業は、大学教授。
彼が、たびたび講演会に呼ばれ、本業と趣味を合体させた “健康と笑い” について話をしていることは、僕も知っていました。
ただ、いつもは講演の後には、お得意の古典落語を披露していたようです。
それが、YouTubeでしか披露していない創作落語の 『末期の酒』 を演じてほしいというリクエストがあったものですから、彼は発案者であり、ネタ元である僕に一報をくださったのです。
本来なら笠懸公民館 (みどり市) 主催による 「高齢者大学」 という企画なので、一般聴講は募集していないのですが、特別に “関係者” という枠で招待してくださいました。
笠懸野文化ホールは、プロの歌手がコンサートをやるような大きな会場です。
前半の40分、彼は大学教授として、真面目に健康についての講義をされました。
休憩をはさみ、舞台上には高座が現れ、お囃子も高らかに、いよいよ都家前橋の登場です。
すぐに落語が始まるのか?と思いきや、さにあらん。
当然、落語には “まくら” が付き物であります。
その、まくらが、驚いた!
前橋さんときたら、高座に上がるやいなや、こう言ったのです。
「今日、この会場に、温泉ライターの小暮淳さんが見えているはずなんですがね~。どこにいますか?」
驚くやら恥ずかしいやら、でも反射的に 「ハーイ!」 と、手を挙げてしまいました。
その後、前橋さんは、僕との出合い、記事との出合い、そして作品ができるまでを語り、落語 『末期の酒』 へと入っていきました。
前橋さんの話芸は、絶品であります。
まさに、“玄人はだし” とは、この人のためにあるような言葉。
『末期の酒』 も、聴くたびにバージョンアップしていて、何度聴いても飽きが来ません。
国定忠治が、この世の最後に呑んだ酒の話です。
いつしか、群馬の古典落語になってほしい作品であります。
※落語 『末期の酒~牢番編~』 は、YouTube 「都家前橋」 にて検索!
Posted by 小暮 淳 at 11:09│Comments(0)
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