2011年05月03日
古本屋ゲーム
ライターという職業柄、“読書” は必須作業です。
ま、“本を読む”というよりは、“資料に目を通す”と言ったほうが適切かもしれません。
参考文献です。
時には、膨大な量の資料(市町村史、温泉史、自叙伝、図鑑や事典など)を一日中読んで過ごすこともあります。
専門書ばかり読んでいると、やはり生き抜きに小説やエッセーが読みたくなります。
でも僕は、あまりお気に入りの作家っていう人がいません(若い時はいましたが)。
ベストセラー本や話題本も、ときには読みますが、小説は読み捨てになるので、安くて面白ければ、何でもいいんです。
と、いうことで、僕は「古本屋ゲーム」をして楽しんでいます。
①古本屋に入ったら、必ず1冊文庫本を買う。
②知っている作家、有名な賞の受賞作は除く。
以上がルールです。
要は、初めて出会う作家で、自分の感性に合いそうな小説を買って帰ります。
(エッセーでも良いのですが、エッセーは著名でないと、なかなか出版されていません)
ま、新人タレントを発掘するスカウトマンみたいな気分で、衝動買いするのです。
無名(僕にとっては)ですから、読んでみて、面白くなくても文句はありません。
実際、数ページ読んで、投げ出してしまう本もたくさんあります。
でも、ことのほか面白ければ、これは儲けもんです。
「スカウトマンとしての腕をあげたな」と、自分をほめてあげます。
最近読んだ本で、思わぬ儲けもんをしました。
中村航(なかむら・こう)著 『夏休み』 (河出文庫) です。
なぜか僕は、タイトルに “夏” が付くと、買ってしまうクセがあるんですね。
「夏の庭」とか「向日葵の咲かない夏」とか「夏と花火と私の死体」とか……
で、『夏休み』 のどこが儲けもんだったのかというと、草津温泉が舞台として登場するんです。
主人公のマモルが義理の友達の吉田くんと、ひと夏の不思議な旅に出かけます。
この “義理” という表現に、まず惹かれました。
2人の奥さん同士が、友達なんですね。だから2人は、義理の友達同士なんです。
このなんとも不安定な人間関係が面白いんです。
で、不思議な旅のたどり着いた先が、なぜか草津温泉。
2人は、真夜中に旅館を抜け出して「西の河原」へ出かけます。
行ったことのある人なら、ご存知でしょうが、そこかしこから湯煙が上がり、源泉が噴き出し、池のように溜まり、川となって流れているところです。
「鬼の茶釜」なんていう熱湯池もあり、最近、落ちてヤケドをした観光客がいました。
夜中に行くなんて、とても危険な場所です。
で、大胆不敵にも2人は、「ひとっ風呂浴びよう」と、素っ裸になって、湯溜まりに入ってしまいます。
いつしか義理の友達が、真の友達へと友情を深めていく話です。
知らずに読んでいて、群馬の温泉に出合うと嬉しいものです。
「古本屋ゲーム」で面白い本に当たる確率は、2割くらいでしょうか。
それでも明日、晴れていたら、我が家から一番近い古本屋まで、散歩がてら歩いて行ってこようかと思います。
Posted by 小暮 淳 at 21:05│Comments(0)
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