2012年04月27日
水上温泉 「天野屋旅館」
僕は、1つの原稿を仕上げるのに、何度でも取材へ出かけます。
“現場百遍”
これがライターとしての僕の私訓です。
原稿料のことを考えると、割りの合わない仕事ですが、何よりも自分が 「納得したいから」 なんですよ。
これが本の出版となると、約1年間を取材と執筆についやしますから、さらに念には念を入れます。
新聞や雑誌の記事に比べると、その “記事” 自体に読者はお金を払ってくれているわけですし、本は後々まで残りますもの。
やっぱり、手を抜くわけにはいきません。
今秋の出版に向けて、昨年より僕は、水上温泉に入り込んで取材活動を続けています。
もう何度訪ねたのかわからないくらい、訪ねています。
初めて訪ねる旅館もあれば、写真を撮り直したり、再取材をしたり、校正を届けたり・・・2度3度訪ねる旅館もあります。
昨日も午後から水上温泉へ入り込み、再取材をしてきました。
「松乃井」 は、桜を入れた外観の撮り直しです。
「山楽荘」 は、前回の取材が真冬で浴室が湯気で見えなかったため、こちらも入浴シーンの撮り直しでした。
何度も訪ねれば、宿のご主人や女将さんとも、それだけ顔を合わせるわけですから、新たな話も聞けるというものです。
“現場百遍”
取材は、し過ぎるということはないのです。
で、昨晩は、路地裏の老舗宿 「天野屋旅館」 に泊めていただきました。
いや~、全館昭和レトロ満載で、ゾクゾクしましたよ。
完全に “つげ義春の世界” であります。
温泉街の古びた食料品店の脇から坂道を下ります。
右手にうどん屋、左手にそば屋、右手に飲み屋と、狭い路地裏に飲食店が点在します。
あれ? 「天野屋ホテレ」
良く見れば、ホテルのルの字の「ノ」が、取れちゃっているんですね。
「“ホテル”と呼ぶのが流行った時代があってね、先代が一時、そう名乗っていたんですよ。私の代から、旅館にもどしました」
とは、2代目主人の西山國弘さん。
ロビーの赤いじゅうたん、パイプ手すりの階段、年代物の柱時計・・・
昭和の匂いが、プンプンしています。
部屋に入って、最初に目についたのが、隅に置かれた「衣桁屏風(いこうびょうぶ)」 です。
着物などをかけておく、鳥居の形をした家具で、2つの衣桁が蝶番(ちょうつがい)でつながっている「えもんかけ」です。
昔は、どこの旅館にもありましたが、最近は滅多に見かけません。
ただ、ただ、感動!
欄間(らんま) や雪見障子(しょうじ)、鏡台・・・
「いいですね~、日本人に生まれてよかったなぁ~」
と、しみじみと眺めてしまいました。
浴室も浴槽も小さいけれど、完全かけ流しです。
これで充分なのです。
「大きくしたくても、湯量に見合った浴槽は、これが限界でね」
なーんていう、ご主人の言葉にもシビレてしまいます。
何もかもが、“昭和” で時が止まってしまったよう・・・
まったくと言っていいほど、何も奇をてらっていないんです。
料理もしかり。
質素で、量がほどほどというのがいいですね。
今朝なんか、しっかりご飯をお替りしてしまいましたよ。
納豆、目玉焼き、焼きのり、大根おろし、焼き魚・・・
そ、そ、そしてーーーーッ!
「フキ味噌」 があるじゃ、あ~りませんか!
僕の大好物です。
もう、これだけで、ご飯が進みます。
嫌いじゃないんですよね。
こういう宿って。
これぞ!“正しい日本の温泉旅館”
久しぶりに、そんな宿に泊まってきました。
Posted by 小暮 淳 at 21:20│Comments(2)
│温泉地・旅館
この記事へのコメント
現場百篇、取材はしすぎることがない、自分以外の人がよくみている
頭にいれて実行してみます
メッセージありがとうございます
頭にいれて実行してみます
メッセージありがとうございます
Posted by ぴー at 2012年04月28日 09:30
ぴーさんへ
そんなんで、参考になりましたかね。
なんでも、持続あるのみです。
お互い、頑張りましょう!
そんなんで、参考になりましたかね。
なんでも、持続あるのみです。
お互い、頑張りましょう!
Posted by 小暮 at 2012年04月28日 20:06