2012年09月17日
大器晩成にダマされて
我が家には、ひと部屋だけ和室があります。
家を建てるときに、「子どものしつけのためにも、畳や床の間のある部屋は必要ですよ」 と業者の人に言われて造りました。
で、現在、その部屋はどうなっているかといえば、案の定、物置状態であります。
といっても、大部分が僕の所有物です。
しかも、ギターなどの楽器類をのぞけば、すべて“本”です。
本といっても、僕が読む本ではありませんよ。
僕が書いた本なのであります。
要は、売れなかった本の山なのです。
僕が毎年、シリーズで温泉本を出版するようになったのは、50歳を過ぎてからです。
これらは、もちろん出版元がありますから、僕が在庫を抱える必要はありません。
実は、それ以前(30~40代) に、僕は3冊の本を出版しています。
当然、自費出版の本ばかりです。
中には、書店に並んだ本もありますが、半年後にはドッサリと著書のもとへ返品されました。
「お父さん、和室の本の山、どうにかしてくれませんか。そのうち重みで、床が抜け落ちるわよ!」
と家人から、イヤミを何度言われたことか・・・
どーにかできるものなら、とっくにどーにかしてますって。
捨てるに捨てられないモノだから、こうやって後生大事にとってあるんじゃないですか!
と、いうことで、畳の上は本の山です。
では、床の間はというと……
一般的には、掛け軸なんかが掛かっていますが、うちの床の間には絵が掛けてあります。
それも版画です。
作者は、前橋在住の木版画家、野村たかあき先生。
そして、タイトルは 『大鬼晩成』。
「これはね、淳ちゃんのことだよ。だから、どうしてもこの絵は淳ちゃんに買ってほしいんだ」
と、25年前に言われて、なんとか数年後に手に入れた思い出の一品なのであります。
野村さんは、鬼の絵を描く作家として知られています。
だから、作品のタイトルには、すべて“鬼”の字が当てられているんですね。
「大器晩成」も、「大鬼晩成」となります。
大きな鬼さんがゴロンと横になって、余裕をくれながらこちらに向かって手を挙げている、なんともノン気な絵であります。
でも、何度この絵に勇気づけられたことか!
ああ、オレって何をやっても抜きんでないなぁ・・・
ああ、オレって才能ないのかなぁ・・・
ああ、やっぱり人生間違えちゃったかなぁ・・・
ああ、この仕事、全然芽が出ないから辞めようかなぁ・・・
くじけそうになったとき、この絵はいつも、僕をおだててくれるんです。
「お前は、大器晩成じゃないか!」ってね。
何十万、ときには何百万という身銭を切って、借金を作ってまで売れない本を書いてこれたのも、すべてが、この言葉にだまされ続けてきたからなんです。
“大器晩成”
なんて、魔法の言葉なんでしょうね。
たぶん、この言葉に年齢制限はありません。
60歳になっても、70歳になっても、「オレは大器晩成だから」 と生きていけたら最高の人生じゃないかな。
今日は、久しぶりに和室に入って、売れなかった本の山を見ながら、こんなことを考えていたのでした。
Posted by 小暮 淳 at 21:01│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
うちにも和室がありますが、やはり物置になっちゃってまーす。
六白金星 未年は大器晩成で60歳から、運がよくなると高島易にかいてありました。(ちなみに↑↑はワタシの生まれ年)
この星の人々全員が運勢とうりとは、とても思えないのでお守りと思ってます。
六白金星 未年は大器晩成で60歳から、運がよくなると高島易にかいてありました。(ちなみに↑↑はワタシの生まれ年)
この星の人々全員が運勢とうりとは、とても思えないのでお守りと思ってます。
Posted by ぴー at 2012年09月18日 09:00
ぴーさんへ
僕は何だろう・・・二黒土星かな?
占いって、ほとんど見ないので、よく分かりません。
でも、茶柱が立つと嬉しいものです。
僕は何だろう・・・二黒土星かな?
占いって、ほとんど見ないので、よく分かりません。
でも、茶柱が立つと嬉しいものです。
Posted by 小暮 at 2012年09月18日 20:45