2012年09月22日
谷川温泉 「ペンション セルバン」
「私の大好きな宿なんですよ。急に行きたくなって、その日に電話して泊まりに行くくらいですから。とにかく、お湯がいいんです!」
いつか、知人のHさんが言っていた宿の名前が、確か “セルバン” だったことを思い出しました。
2年前に取材で谷川温泉に入り込んだ時から、気になっていた宿ではあるんです。
だって、温泉地の一番奥に、あたかも一軒宿のように建っていて、しかもペンションなのに “天然温泉かけ流し” とあれば、誰だって気になりますよね。
で、昨日は念願かなって、朝からウワサのペンションへ取材に行ってきました。
宿に入るなり、開口一番、奥さんが 「Hさんが、よく来てくださるんですよ」 と言葉を切り出した。
「???・・・」
えっ、僕のこと知っているんですか?
というより、僕とHさんが知り合いだということを、奥さんは知っているということですね?
「あの方は、本当に温泉がお好きですね」
と今度は、ご主人が話しに加わりました。
ま、僕としては、共通の知り合いがいるということは、取材もしやすいということです。
まずは、つかみはOK!
セルバンは、この平原良男さん、和子さん夫妻だけでやっている小さな小さな宿です。
気になるのは、この “セルバン” という宿の名前です。
命名したのは、山好きのご主人。
なんでも、マッターホルンのことをフランス語で 「モン・セルバン」 っていうんだそうです。
どうりで、山小屋風の宿内には、いたるところにマッターホルンの写真が飾ってあるわけです。
宿の開業は、昭和60(1985)年。
それまでは、高崎市内でサラリーマンと専業主婦だった2人。
ご主人の実家の敷地続きにあった、元銀行の保養所を改築してペンションを始めました。
最初は奥さんが1人でやっていましたが、10年前にご主人も早期退職をして宿に入り、現在は2人で仲良く宿の切り盛りをしています。
「接客と料理は女房、私はもっぱら掃除と庭の手入れです」
というご主人の特技は、ジオラマの制作!
薪ストーブの上に、2万5000分の1で作られた精巧な 「谷川温泉と谷川岳」 のジオラマが置いてあります。
実は、このジオラマを見るのは、初めてではありません。
過去に、谷川温泉内で何度も見ているのです。
「このジオラマ、ここにもあるんですね?」と僕が言うと、
「ええ、うちの主人が作ったんですよ」と奥さん。
「だって、方々で見かけますよ」
「ええ、町内の10ヶ所の施設や旅館に寄贈したんですよ」
とのことだった。
実にリアルな模型で、素人が趣味で作ったとは思えない完成度であります。
「地元に暮らしていても、一ノ倉沢や天神平の方角、位置が分からない人が多いんですよ。これが旅館にあったら、お客さんにも、すぐに教えてあげられるでしょう!」
とは、なんて殊勝なお方なのでしょうか。
もう、それだけで、僕はご主人を尊敬してしまいました。
さてさて、宿の歴史や山のうんちく話を聞いたあとは、お待ちかね!Hさんご推薦の温泉をいただくことにしました。
浴室は、内風呂と露天風呂が男女各1つずつ。
それも造りは、大きからず、小さ過ぎず、好感の持てるちょうど良いサイズです。
でも何かが、ちょっと違う!
何がって、内風呂も露天風呂も、オーバーフローされているお湯の量がハンパじゃありませんって。
ザーザー、いやドボドボ、いやバシャバシャ、いやドックンドックン?
擬音なんて、どうでもいいんです。
まあ、それくらい(もったいないと思うくらい)、大量に湯がかけ流されています。
それも加水なし、加温なし。
それもこれも、湯量豊富な2本の源泉から湯が引き入れられているからできる技なんですね。
しかも、2本の源泉の温度は、約56度と約26度と極端に温度差があります。
と、いうことは、この異なる温度の温泉を混合することにより、常に適温を調節することができるということです。
お見事であります!
ペンションで、ここまでの技を兼ね備えている宿は、全国でも少ないのではないでしょうかね。
無色透明で済んだ清流のような湯の流れを感じながら、極上の湯をしばし堪能いたしました。
露天風呂の周りにはコスモスをはじめ、ご主人が育てている草花が、千紫万紅の装いで今が見ごろと咲き誇っています。
Hさん、素敵な宿を紹介してくださり、ありがとうございます。
まさに、知る人ぞ知る、隠れ湯宿ですね。
Posted by 小暮 淳 at 18:11│Comments(0)
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