2013年02月01日
我は神の子なり
ドワ~~~~ン!
ドワ~~~~ン!
午前5時45分
ピーンと張った冷たい闇の中に、銅鑼(どら) の音が鳴り響きます。
“天道念仏” のはじまりです。
天道念仏は、五穀豊穣を願う農民たちが、作物に恵みをもたらす太陽(お天道様) に感謝する祭です。
日の出から日没まで、「ありがとう」の意味を込めて、銅鑼を鳴らし続けます。
な、な、なんじゃ、こりゃ~?
正直を申しまして、僕も18年前に、この地に引っ越してきたときは、目を疑いましたよ。
だって、ここは、どこよ?
群馬でも山深い部落ならいざしらず、ここは県都、前橋市内ですぞ。
確かに、まわりには、まだ田畑が残り、農業を生業にしている人たちもいますが、だいたいは年寄りが中心で、若い人たちは勤めに出ています。
休日でもないのに、日の出前から神社に集まり、のぼり旗を揚げ、公民館に戻ってからはお札を作ります。
そして、平日の昼日中から酒を飲みます。
これが 「年番」 という、僕が住む地域に何百年と続いている年中行事なのです。
僕の住む前橋市南部の町は、約100戸の世帯があり、11の班に分かれています。
僕の家は5班に属し、現在は9戸があります。
で、班長とは別に、この祭担当の 「年番」 という役が回ってくるのです。
そして今年、うちに3回目の 「年番」 が回ってきました。
前述した銅鑼を一日中鳴らす 「天道念仏」 の他にも、上神様と下神様と呼ばれる2つの神社(無人) に神主を呼んで大々的に行う 「春祭り」 「天王まつり」 「秋祭り」、「神楽廻し」 などの行事があります。
今年はすでに先月、冬の 「神楽廻し」 が終わりました(夏もあります)。
これは、太鼓を叩きながら獅子頭が、町内の約100戸の家を一軒一軒回ります。
そのときに叫ぶかけ声が、少し、変わっています。
「悪魔っぱら~い! 悪魔っぱら~い!」
太鼓の音と、このかけ声が聞こえると、家の中から人が出てきて、酒や米や現金をお布施として奉納します。
「ありがとうございます。さあさあ、中にはいって、寝たきりのばあさんを噛んでやってくださいな」
ええーーっ、ばあさんを噛むだぁ~?
そーです。
獅子は、人間や家に住み着いた “悪魔” を追い払ってくれるのです。
腰の悪い人は、腰を。足の悪い人は、足を。
「コイツは頭が悪いから、頭を噛じってくんない(笑)」
なんて、子どもの頭を差し出す親もいます。
今日は下神様に、のぼり旗を立て、公民館でお札を作り(この札は町内全戸に売ります)、昼を迎えました。
弁当と酒が振る舞われ、宴会の始まりです。
今年の年番は11人。
2人が主婦で、4人が隠居または農家。サラリーマンが4人、フリーが1人(僕です)。
サラリーマンの4人は、僕より年下。
最近、この地区に越してきた若い人も2人います。
「会社に年番の行事予定表を提出して、有給休暇をとってきましたよ」
「私もです」「僕もです」
と言えば、長老が、
「あったりめーじゃ、ねーか! 年番出なけりゃ、この村じゃ村八分にされちまうぞ! 昔はさ、休みがとれないなんてグズ言ったヤツには、お前は村を取るのか?会社を取るのか?村のが大切だんべ!だったら、さっさと会社なんて辞めて来い! なーんて言われたもんだよ」
すると、もう1人の年寄りが、
「オレたちはさ、今年1年間は、神様に選ばれた “神の子” なんだよ。村の平和のために働くのが、俺たちの仕事なのよ」
なにかと、世知辛い世の中である。
お天道様を崇(あが)め、悪魔退治にいそしむ・・・
そんな1年が、あってもいいものである。
我は神の子なり。
Posted by 小暮 淳 at 19:21│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
実家の辺りは、獅子舞、お神輿などお祭り行事があり賑やかで懐かしく思い出します。(前橋東部)
今でも役回りの年齢の人が受け継いでいるようです。
お腹の中で石が暴れて激痛という悪魔が…おりまして
ゼヒ、お腹のヘンを獅子に噛まれたい(笑)
今でも役回りの年齢の人が受け継いでいるようです。
お腹の中で石が暴れて激痛という悪魔が…おりまして
ゼヒ、お腹のヘンを獅子に噛まれたい(笑)
Posted by ぴー at 2013年02月02日 09:19
ぴーさんへ
次回の神楽廻しは、8月です。
その日に、我が町内に来て、腹を出してください。
獅子に頼んで、噛んでもらいましょう!
えっ、そんな長い間我慢できないって?
じゃあ、医者に行ってください。
次回の神楽廻しは、8月です。
その日に、我が町内に来て、腹を出してください。
獅子に頼んで、噛んでもらいましょう!
えっ、そんな長い間我慢できないって?
じゃあ、医者に行ってください。
Posted by 小暮 at 2013年02月02日 17:10