2013年03月08日
おじいさんといっしょ
「小暮さんの書く、家族の話が好きなんです」
最近、そんなことを言われることが多くなりました。
なんのことかと言えば、このブログのことです。
「息子さん、ついに行っちゃったんですね。同じ息子を持つ親として心にしみました」
なんて息子の留学話に共感してくれた男性もいました。
「小暮さんの奥さんって、面白いよね。大好きだわ」
と、夫婦ネタを楽しみにしている女性もいました。
「お父様は、その後お元気ですか?」
とボケ老人のオヤジを気遣ってくれる人もいます。
そういえば、最近、オヤジネタがご無沙汰でしたね。
お気遣い、ありがとうございます。
相変わらずですが、なんとか元気にやっています。
ボケの具合も現状維持で、進行していません。
3度の飯もしっかり食うし、散歩も昼寝もしています。
でもね、今年89歳になる高齢ですからね。
家族としては、油断はできません。
だから1人にするわけには、いかないのです。
と、いうことで、今日は朝から1日、僕がオヤジのお守りをしてきました。
実家で、いつも両親の面倒を見てくれている兄貴が、仕事で東京へ帰ってしまったのです。
加えて、オフクロも週に1回のデーサービスのお迎えバスが来て、出かけてしまいました。
「よっ、じいさん! おはよう」
と声をかければ、
「う? 誰だ?」
と、すっとぼけてくれます。
「さあ、誰でしょう? あなたの息子では?」
と、皮肉を言えば、
「ああ、そうだ。ジュンだ」
と答えます。
「ばあちゃんは、どこ行ったんだろーな?」
「○○(施設名) だよ」
「えっ、また入院しちゃったのか?」
「今日は、デーサービスの日だよ」
「そうか、じゃあ、帰って来るんだな。よかった……」
安心したようで、また作業を始めました。
なんの作業かといえば、“袋貼り” です。
いったい、何のためしているのか分からないのですが、オヤジは朝起きると、決まって新聞の折込広告を全部、のり付けして袋にしてしまうのです。
だから実家は、いついっても袋の山です。
本人は、ゴミ袋を作っているつもりらしいですよ。
「散歩へ行く人~?」
と声をかければ、
「ハーイ!」
と、幼稚園児のように大きな声が返ってきます。
「じゃあ、早く袋貼り終えて、出かける用意をしなくっちゃ」
と、オヤジをせかします。
「どこ行くんだ? 県庁か? 駅か?」
と、うれしそうに片づけを始めるオヤジ。
その姿は、散歩へ行く前のマロ君(我が家の愛犬) と一緒です。
オヤジに尻尾があったら、ブンブン振っているはずです。
それくらい、散歩が大好きなんです。
「暖かいね、もう春だね」
「そーだね、春だね」
シワシワのオヤジの手を取り歩き出しました。
でも、いつもと調子が違います。
時々、立ち止まって目をつむってしまいます。
「どうした? 具合が悪いのか?」
と声をかければ、
「大丈夫だ。ゆっくり歩く。杖を持ってくるの忘れた」
いつもは1人で自分のペースで歩いてるに、今日は僕が手を取っているものだから、スピードが上がってしまったようです。
だから、今度はオヤジのペースにあわせて、ゆっくり歩くようにしました。
それでも、しばらくすると立ち止まってしまいます。
ときには、ガードレールや花壇の囲いに腰を下ろして休んでしまいます。
以前は、こんなことはありませんでした。
確実に、老いは進んでいます。
「帰りはバスで帰ろうな」
「うん」
僕とオヤジは、デパートの地下で弁当を買って、バスに乗って帰ってきました。
「今、どこへ行って来たんだっけ?」
「ばあちゃんは入院しちゃったんか?」
「なんでジュンがいるんだ?」
弁当を食べながら、相変わらずボケを連発しています。
でもね、どっこも体は悪いところないし、子どもの言うことは聞くし、とってもイイおじいさんですよ。
何よりも、人生の先輩として、僕に 「老いる」 ことの楽しさを教えてくれますもの。
さあ、じいさん、今度はどこへ散歩に行こうか?
Posted by 小暮 淳 at 21:21│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
ごめんなさい目頭があつくなって…自分が小さく思えてしまいました。
うちにも、方足ボケに足をいれている姑がいて、主人と見守りしています。
親には、老いる楽しさを教えてもらっていると思って接しようと思いました。
うちにも、方足ボケに足をいれている姑がいて、主人と見守りしています。
親には、老いる楽しさを教えてもらっていると思って接しようと思いました。
Posted by ぴー at 2013年03月09日 09:28
ぴーさんへ
何でもそうでしょうが、大変と思えば大変で、苦労と思えば苦労になってしまいます。
すべては、受け止め方の問題のようです。
“子どもを叱るな来た道だ。老人を笑うな行く道だ”
ですね。
何でもそうでしょうが、大変と思えば大変で、苦労と思えば苦労になってしまいます。
すべては、受け止め方の問題のようです。
“子どもを叱るな来た道だ。老人を笑うな行く道だ”
ですね。
Posted by 小暮 at 2013年03月09日 17:23