2013年08月14日
人魂狩り
お盆なので、今年も恒例の怪談話を1つ。
あれは、今から45年以上も昔のこと。
小学生の夏休み。
僕らは、毎日のように雑木林へ出かけて、カブトムシやクワガタムシを捕まえて遊んでいました。
僕らとは、「ワッケン」 ことW君、「ゲシ」 ことT君、「ゴンベ」 ことA君、と僕です。
ある日のこと。
3人に会うなり、ワッケンが、
「グレコ(僕のアダ名)、なんで昨日は来なかったんだよ」
と、食ってかかってきました。
「なんでって、前に言わなかったっけ。家族で墓参りに行ってたんだよ」
と僕。
すると今度は、ゲシが、
「グレコは、ラッキーだよな。オレたち、とんでもないモノ見ちゃったんだぜ! な、ゴンベ?」
話をふられたゴンベは、
「ああ、オレ、もう2度と、あの墓地へは行きたくねーよ」
今にも泣き出しそうな顔で答えました。
「えっ、何があったんだよ?」
と僕。
「絶対、信じるなら話す。俺たちは、本当に見たんだから……」
そう言って、ワッケンが、昨日の夕方の出来事を話し出しました。
昭和40年代のこと。
前橋市の市街地に暮らしていたとはいえ、住宅街を少し抜ければ、田んぼや畑、雑木林はいくらでもありました。
僕らは、ザリガニが釣れる池や川、カブトムシが集まる林、ノコギリクワガタやミヤマクワガタが捕れる木など、秘密の遊び場をいくつも持っていました。
3人は、その中の1つ、利根川へ下りる河川敷の途中にある雑木林へ出かけたといいます。
「もう帰ろうよ」
とゴンベが言い出したときでした。
「あっ、あれなんだ?」
とゲシが、林の奥を指差しました。
フワ~、フワ~と、光の玉が浮いていたといいます。
「なんだろう、行ってみよう!」
とワッケンが走り出しました。
追って、2人も駆け出しました。
雑木林を抜けた先には、小さな墓地があるだけです。
光の玉は、墓石の上を、フワ~、フワ~と漂っていたといいます。
「あれ、人魂(ひとだま) じゃ、ねーか?」
と、物知りのゲシが言いました。
「人魂って、なんだよ?」
とワッケンが訊くと、
「死んだ人の魂(たましい) だよ。この世にまだ未練があって、漂っているんだって」
とゲシが答えました。
「いいよ、もう、帰ろーよ」
とゴンベが後ずさりをはじめたときです。
「待て、ゴンベ! 人魂、捕まえようぜ!」
と、ワッケンが虫取り網を振り回しました。
「ゲシも手伝えよ。ほれ、そっちへ逃げたぞ!」
フワ~、フワ~、フワ~
と漂いながら光の玉は、大きなクヌギの木の裏へと消えていきました。
「よーし、はさみ討ちだ! ゲシ、向こうへ回れ!」
と、2人が左右に分かれて、クヌギの木の裏へ回り込んだときでした。
うわわわわわわわわわわーーーーーーっ !!!
そこには、白髪の老婆がうずくまっていたといいます。
そして、ひと言、
「どうして、後をつけてくるんだい」
もう、45年以上も昔のことです。
僕の記憶も、だんだん薄れてきました。
ただ、その後、僕ら4人は2度と、その雑木林へは行きませんでした。
今思えば、唯一、るり色に光り輝くタマムシがいる、“秘密の森” だったのです。
※過去の怪談話は、下記のブログをご覧ください。
●2010年8月15日 「謎学の旅③ おばけ坂の白い家」
●2011年8月12日 「首のないボーイ」
Posted by 小暮 淳 at 21:43│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
お久しぶりです。
札幌も暑いです。道路脇の花壇に秋桜が咲き始めています。
お盆が過ぎれば、秋風が立つと言われています。
僕も一時期グレコと呼ばれていましたよ。
その他にはオクレとも呼ばれていた時期があったなー。
まだ そちらは暑さが続くと思います。お体にきをつけて。
札幌も暑いです。道路脇の花壇に秋桜が咲き始めています。
お盆が過ぎれば、秋風が立つと言われています。
僕も一時期グレコと呼ばれていましたよ。
その他にはオクレとも呼ばれていた時期があったなー。
まだ そちらは暑さが続くと思います。お体にきをつけて。
Posted by 小暮茂 at 2013年08月15日 23:09
小暮茂さんへ
お久しぶりです。
こちら群馬は連日、35度を超える猛暑、いや酷暑、いやいや炎暑であります。
夏だけは、北の大地にあこがれてしまいます。勝手ですが…。
やっぱり茂さんも、アダ名は 「グレコ」 でしたか。
うちの一族は、いとこも、みんな 「グレコ」 と呼ばれていました。
お久しぶりです。
こちら群馬は連日、35度を超える猛暑、いや酷暑、いやいや炎暑であります。
夏だけは、北の大地にあこがれてしまいます。勝手ですが…。
やっぱり茂さんも、アダ名は 「グレコ」 でしたか。
うちの一族は、いとこも、みんな 「グレコ」 と呼ばれていました。
Posted by 小暮 at 2013年08月16日 15:00