2013年09月18日
向山温泉 「宮前山荘」②
“現場百遍”
1回より2回、2回より3回・・・
取材は、し過ぎることはありません。
訪ねるたびに、新たな発見があるものです。
人も、同じです。
初対面では、なかなか本音の部分は聞き出せません。
2度3度、顔を合わせることにより、その人の人柄に触れることができます。
前回、向山温泉(群馬県みなかみ町) の一軒宿 『宮前山荘』 を訪ねたのは、一面雪に覆われた真冬でした。
スキー場の中にある温泉民宿です。
雪の中に缶ビールを冷やし、湯上がりに飲んだことを懐かしく思い出します。
今回は、季節が変って、晩夏。
スキー場に人影もなく、青々と茂った山あいに、ひっそりとたたずんでいました。
「その節は、大変お世話になりました」
どちらからともなく、あいさつを交わしました。
出迎えてくれたのは、2代目主人の真庭寛さんと女将の昭子さん夫妻。
お茶を飲みながら、雑談をはじめました。
前回来た時に、民宿の歴史は聞いたし、温泉掘削までのいきさつも聞いたし、女将さんは、さらに雪深い湯の小屋温泉の出身だという話も聞きました。
別に、これといって、あらためて聞くこともないのです。
ただ、ただ、お茶を飲みながら四方山話に花を咲かせました。
「ああ、この辺は昔、陸の孤島でね。利根川を渡って対岸の小学校へは、吊り橋を渡って通ったもんですよ」
と、ご主人。
「へ~、そうだったんですか。今は立派な橋が架かっていますが、昔は吊り橋があったんですね」
と僕。
すると、ご主人が言いました。
「今でも、ありますよ。地元の人の生活道ですからね」
「えっ、今もあるんですか!」
と驚けば、
「ええ、駐車場のすぐ下です。あれ、橋を渡るときに見えませんでしたか?」
ん~~、気づかなかった!
なんでも、僕が車で渡って来た鉄筋コンクリートの橋は、昭和47(1972)年に奥利根国際スキー場(現・奥利根スノーパーク) のオープンに合わせて架けられたとのこと。
それまで、ここ向山集落の人たちにとっては、吊り橋が国道を結ぶ唯一の手段だったといいます。
本当に、車も入れない “陸の孤島” だったわけです。
もー、僕は、居ても立ってもいられませんって。
高所恐怖症のくせして、吊り橋マニアなんですよ。
怖いんですけど、あの、ゆら~り、ゆら~り揺れるスリルがたまりません。
で、さっそく訪ねてみると・・・
まさに “灯台下暗し” であります。
ちゃんと駐車場の奥に、「つり橋 →」 の看板が出ているじゃありませんか!
『昭和27年12月竣工』 『向山橋(利根川)』
と、主柱に刻まれています。
「へ~、ご主人は、この橋を渡って学校へ通っていたんだ」
そんなことを思いながら、ゆら~り、ゆら~り揺れる橋を、おっかなびっくりしながら渡ったのであります。
“現場百遍”
訪ねるたびに新しい発見があるものです。
Posted by 小暮 淳 at 18:40│Comments(0)
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