2014年02月20日
思わぬ裏話
「小暮先生ですか?」
薬局の待合室で、男性から声をかけられました。
年の頃は、50代後半。知らない人でした。
僕のことを “先生” なんて呼ぶ人は、極限られた人たちです。
カルチャースクールの受講生か、講演やセミナーの主催者くらいなもの。
えーと、誰だっけかなぁ……? と考えあぐねてみましたが、分かりません。
話を聞くと、なんでも以前、某ショッピングモールで開催されたイベントで、著書にサインをもらったのだと言います。
へー、それだけで、よく僕と分かりましたね。
「時々、テレビでもお顔を拝見していますから」
とのこと。
あらら、それはお恥ずかしい。
彼も、僕がなんで、この薬局にいるのかを知りたい様子だったので、実家がこの近くで、オヤジの薬を受け取りに来たのだと説明しました。
やがて、彼の番がやって来て、席を去って行きましたが、問題は、その後です。
僕らの会話を隣で聞いていた60代のオジサンが、間髪を容れずに話しかけてきました。
「そーでしたか、あなたがね。いえね、私も温泉が好きで、方々へ出かけているんですよ」
このテの、馴れ馴れしい御仁に出会うと、僕は警戒してしまいます。
やがて、にわか知識のひけらかしが始まり、終始自慢話で終わることが常だからです。
ところが、このオジサン。なかなかの温泉通なのであります。
行った温泉の自慢話ではなく、「あそこの主人とは長い付き合いでね」 とか、「あそこの宿とあそこの宿は中が悪いんだよね」 なんて、かなり深い話題をふってくるのです。
それも、僕が何度も取材で通って仕入れたネタなんかも知っています。
「私は、あそこの風呂が好きだったんですよ。でも廃業しちゃったのは残念だね」
なんていう、最新の情報まで知っている。
さらに、「あそこの主人は、アル中だったんだよ。息子は2人いたんだけどね。長男は……」
などと、かなり入り込んだ裏話が、短時間にポンポンと飛び出してきました。
こうなると、僕のほうがオジサンの話に夢中です。
もっと話を聞き出そうとした、その矢先、
「小暮さ~ん」
と、受付から呼び出しの声が!
あ~、オジサン!
その話の続き、聞かせてくださいよ。
今度、いつ薬局に来ますか?
いやいや、せめてお名前を!
今度、じっくり取材をさせてくださいな!
思わぬところに、温泉ネタというのは、転がっているものです。
なんだか、とっても得をした気分になって、薬局をあとにしました。
Posted by 小暮 淳 at 17:52│Comments(0)
│つれづれ