2014年09月07日
知らない人の人生
いったい今までに何回、知らない人の葬儀に参列したことでしょう。
会葬代行のことです。
※(詳しくは当ブログの2013年4月30日 「会葬代行」 参照)
オヤジは今月で、90歳になります。
足腰は健康ですが、目と耳と頭がかなり不自由です。
オフクロは今年の5月で、87歳になりました。
目も耳も頭も健康なのですが、足が不自由なため外出がままなりません。
ここ数年、そんな両親に代わって、僕が会葬の代行をしています。
「悪いんだけどさ、○○さんが亡くなったから、行ってきてくれないかね?」
そんな電話が、オフクロから頻繁にかかってきます。
毎日、オフクロは新聞の 「おくやみ欄」 を欠かさずチェックしているようです。
「いやだね、年下の名前を見つけるのはさ」
そう言葉を付け加えるのが、いつものクセです。
僕も 「おくやみ欄」 は目を通しますが、確かに、うちの両親より年上の人の死亡記事は年々少なくなっています。
「あのさ、ばあちゃんの同級生の旦那さんなら、別に行かなくてもいいんじゃないの?」
と言えば、
「何言ってるんだい! そういうもんじゃないんだよ。とっても仲が良かった友だちなんだら。私やお父さんが亡くなったときには、来てもらわなくっちゃならないんだからね。頼んだよ」
なんて、叱られてしまうのでした。
で、昨晩も、オフクロの友人のご主人という、僕にとっては縁もゆかりない、まったくの赤の他人の通夜に行ってきました。
もちろん生前に会ったことはないし、昨日、遺影でお会いするのが初めての方です。
だから、なーんの思い出も感慨もありません。
でもね、不思議なものです。
在りし日の故人の映像がスクリーンに投影されると、見入ってしまうものです。
へー、この人は、××町の生まれなんだぁ~。
職業は△△だったんだね。
孫もこんなにたくさんいて、幸せな人生だったんだなぁ~。
なんて、勝手に頭の中でストーリーを作り上げて、感情移入をしながら焼香を済ませてきました。
そして今日、実家に顔を出したときのことです。
「ほら、長寿銭も出たし、いい人生だったようだね」
と報告をすると、
「ありがとうね。でも、あの人は息子さんを亡くしているんだよ。かわいそうだったね」
「えっ、そうなの!」
と驚く僕に、さらに真実が告げられました。
「そう、自殺だったんだよ」
享年88歳、知らない人の人生です。
会葬しただけで、その人の一生なんて分かるはずがありません。
楽天的に妄想していた自分を、ちょっぴり恥じています。
Posted by 小暮 淳 at 14:38│Comments(0)
│つれづれ