2015年09月09日
八塩温泉 「神水館」④
昨日は、3年ぶりに八塩温泉(群馬県藤岡市)を訪ね、半日取材。
夜は、「日本秘湯を守る会」 会員宿でもある 「神水館」 に泊まってきました。
3年前に訪れた時は新聞記事の取材で、女将と若女将から話を聞きました。
と、いうことは5代目主人の貫井昭彦さんにお会いして話を聞くのは、2010年に出版した『群馬の小さな温泉』(上毛新聞社) の取材以来ですから、5年ぶりということになります。
あの頃、ご主人は、まだ40代後半でした。
今は僕と同じ五十路であります(お互い、会わない間に歳をとりましたね)。
老舗温泉宿の主人と、温泉ライター。
互いに仕事は異なりますが、温泉を愛する者同士です。
膝を突き合わせれば、もう、止まりません!
熱い熱い、温泉談義のはじまり、はじまり~!
「富岡製糸場と絹遺産群」 の世界遺産登録の前と後の客の変化から始まり、ネットによる誹謗中傷や秘湯の減少、しまいには某ホテルチェーンの温泉地席巻問題に至るまで、白熱した討論が時間を忘れて繰り広げられたのであります。
で、つくづく僕は感じました。
「ああ、この人は、心底温泉を愛しているんだなぁ~」 と!
いい湯守がいる宿か、そうじゃないか、というのは、その宿に行ってみれば、本当は誰でも分かることなんですね。
なのに現代人は、情報過多の世の中にいて、なかなか自分の五感を使って正しい判断ができなくなっています。
設備やサービスばかりが優先して、肝心な温泉の価値判断が二の次三の次にされています。
「ネット社会の今は、素人誰もが総評論家ですから」
と言って苦笑いをしたご主人の言葉が、僕の胸に突き刺さったまま、今でも抜けません。
源泉の温度は約15℃。
身が縮み上がるような冷鉱泉です。
でも、こんな冷たい鉱泉を、何百年も昔から温めて入っていたのです。
“塩の湯口 八ツ所”
これが八塩の由来です。
戦時中は製塩所があったほど、濃厚な源泉が湧いています。
それゆえ入浴には、加水、加温して使用していますが、神水館には八塩温泉で唯一今でも 「源泉風呂」 があります。
これこそが、ご主人の湯守としてのこだわりなのであります。
「うーーーーっ!」
と気合を入れて湯舟に沈めば、あれよあれよのうちに沈殿していた析出物が舞い上がり、あっとい間にレンガ色の湯舟に早変わり。
そして、その味は、「しょっぱーーーい!」 のであります。
もちろん湯上がりは、熱した旧鬼石町特産の名石“三波石”の上でカモ肉を焼いて食べる 「三波石焼き」 に舌鼓を打ちながら、冷えた生ビールをジョッキで豪快にいただきました。
ご主人、女将さん、またまた大変お世話になりました。
この恩は、いずれ活字にしてお返しいたします。
Posted by 小暮 淳 at 15:19│Comments(0)
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