2016年07月15日
伊香保温泉 「橋本ホテル」
“ステンドグラスの館へ、ようこそ”
そんなキャッチコピーを付けたくなりました。
湯元通りの坂道を上がり、紅葉の季節はライトアップされることで有名な河鹿橋を過ぎ、大露天風呂へ向かう途中。右手の森の中に、白いしょう洒な洋館がたたずんでいます。
いつも通るたびに、気にはなっていたんです。
レンガの階段を昇ったエントランスには、大きな八角形をしたステンドグラスの窓。
その手前には、やはりステンドグラスで作られた 「HASHIMOTO HOTEL」 の看板が。
フロントロビーに入っても照明の傘は、すべてステンドグラスです。
「私の趣味なんですよ」
と4代目女将の橋本廣子さん。
“趣味” と聞いて、てっきり僕はコレクションだとばかり思っていたのですが……。
2階のラウンジを案内された時です。
年季物の渋い、フクロウのステンドグラスを見つけました。
「これはまた、味があっていいですね」
と僕が訪ねると、
「これがステンドグラスを作るようになったきっかけだったんですよ」
「えっ、もしかして、今まで見ていたのはすべて手作りだったんですか!」
驚くやら、感心するやら、その完成度の高さに、プロの作品だとばかり思っていました。
なんでも女将が嫁いで来た時にあったステンドグラスだったようです。
創業は明治42年(1909)。
当時の写真を見ても、3階建てのオシャレな建物です。
初代が洋食のレストランとして開業。のちにホテルになったといいます。
明治時代に洋食ですよ!
伊香保の中でも、さぞかしハイソな客人たちが集ったことでしょうね。
昔の宿帳を見せてもらうと、外国人の名前ばかりでした。
と、その時、
「ここを見てください」
と橋本さんの指さしたページには……。
Yume Takehisa
1929年(昭和4年) に、画家の竹久夢二が泊まった時のサインです。
語り継がれるエピソードによれば夢二は、チキンライスを玉子でくるんだ料理(オムライス) が好きで、何度も訪れていたといいます。
いやいや、夢二らしい!
かなりのハイカラさんだったようですよ。
浴室にも大きなステンドグラスの窓がありました。
湯は伊香保伝統の 「黄金の湯」。
見た目は、うっすらとしたカーキ色でしたが、体を沈めると途端に沈殿物が舞い上がり、濃厚な茶褐色のにごり湯となりました。
熱からず、ぬるからず、いい塩梅です。
いつまでも湯の中で、ステンドグラスの幻想的な明かりを眺めていました。
Posted by 小暮 淳 at 21:43│Comments(0)
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