2017年03月03日
伊香保温泉 「岸権旅館」
僕は昨年の春から天下の名湯・伊香保温泉にある全宿の “湯” を制覇しようと、果てしない行脚の旅に出ています。
最初は、いったいいつになれば終わるのだろうと思われた長い旅も、やがて終わりを迎えます。
昨晩、その最後の宿に泊まってきました。
伊香保温泉全44軒の最後に訪ねたのは、屈指の老舗 「岸権旅館」 でした。
室町時代から安土桃山、江戸、明治、大正、昭和、そして平成と脈々と湯を守り継いできた3軒の老舗宿。
そのうちの1軒が、岸権旅館です。
創業は天正4年(1576)年といいますから、なんと440年前であります。
まさに伊香保温泉全宿制覇のファイナルを飾るにふさわしい旅館でした。
その昔、湯の引湯権利が与えられた大屋制度。
12軒の宿には、十二支にちなんで干支の名が付けられました。
「辰の湯」
これが岸権の称号です。
今でも残る3軒の宿には、「黄金(こがね)の湯」 と呼ばれる伊香保伝統の茶褐色の湯が引湯されています。
岸権には、伊香保温泉総湧出量の約1割に当たる毎分300リットル以上の源泉が届いています。
たった1軒で、300リットルですぞ!
だもの本館、離れ、浴室棟にある計13の浴槽は、すべて完全放流式(かけ流し) です。
これはファイナルにふさわしく、すべて “湯破” しようではないか! と意気込んでみたのですが、ひと晩では体力の限界があります。
しかも女風呂には入れません。
ということで、婦人浴室と貸切風呂を除く、代表する3つの湯を “湯破” することにしました。
「権左衛門の湯」 と 「又左衛門の湯」 と 「六左衛門の湯」 です。
すべて岸一族の先祖の名前が付いています。
となれば第1湯目は、やっぱり岸権の創業者である権左衛門氏に敬意を表さないわけにはなるまい。
江戸時代の古い錦絵に描かれた伊香保温泉の入浴風景。
その湯殿を再現したのが、総ひのき造りの 「権左衛門の湯」 です。
上越国境の白い連山を眺める露天風呂と2つの丸い桶風呂。
惜しみなくかけ流されている茶褐色の湯を存分に堪能しました。
もちろん、朝までに “三左衛門”の湯をすべてめぐりました。
そして、僕の11ヶ月にわたる旅も終わりました。
Posted by 小暮 淳 at 18:34│Comments(0)
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