2017年11月24日
川原湯温泉のゆくえ④
「5年後には “旧七軒” と呼ばれていた旅館が、すべて揃います。そうすれば、もう少し温泉街らしくなると思います」
前回、「川原湯温泉のゆくえ」 というタイトルでブログを書いたのは2011年11月でした。
あれから丸6年が経ちました。
今週、僕は久しぶりに新しくなった川原湯温泉(群馬県吾妻郡長野原町) を訪ね、温泉協会長の樋田省三さんにお会いしてきました。
樋田さんは “旧七軒” の1軒、「やまきぼし旅館」 のご主人でもあります。
「やまきぼし旅館」 といえば、温泉好きで知られる作家、嵐山光三郎氏が命名した露天風呂 「崖湯」 があることで有名な宿でした。
もう20年以上も昔ですが、僕は 「崖湯」 入りたさに泊まり、奇祭 「湯かけまつり」 を取材したことがありました。
「以前は温泉街の中だったので、風はしのげていたのですが、新しい会場は標高600メートルの山を切り開いた所なので、吹きっさらしなんです。マイナス10℃以下になるので、ふんどしも凍ります(笑)」
毎年1月20日の早朝5時に開催される祭りです。
土地の男衆が紅白に分かれて、ふんどし一丁の裸で、湯をかけ合います。
その昔、突然温泉が出なくなってしまいました。
困り果てた村人たちは、温泉の匂いが、ゆで卵に似ていたことから、ニワトリをいけにえにしてお祈りしたところ、お湯がふたたび湧いたといいます。
「お湯わいた、お湯わいた」 と言って喜んでいましたが、そのうち 「お祝いだ、お祝いだ」 と言って、みんなで湯をかけ合うようになったのが、奇祭のはじまりとされています。
昭和27(1952)年、そんな自然豊かで、のどかな温泉地に突如、衝撃が走りました。
川原湯温泉を水没させる八ッ場(やんば) ダム計画です。
65年経った現在も、まだダムは完成していません。
“去るも地獄、残るも地獄”
そう言われた長い長い闘争と翻弄の日々が、もうすぐ終焉を迎えます。
すでに代替地には、温泉街のシンボル 「王湯」(共同湯) と5軒の宿が移転しています。
でも周辺は、ダム湖も道路もまだまだ工事中で、温泉街の体は成していません。
「正直、私たちは過去を引きずっています。でも、次世代の後継者たちが帰ってきています。彼らが新しい川原湯温泉をつくってくれるはずです」
ダムの完成は、2020年の春だといいます。
東京オリンピックの年です。
湖を見渡しながら、湯舟に浸かれる日も、もうすぐです。
Posted by 小暮 淳 at 12:27│Comments(0)
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